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第58話 環の母
現場となった路地裏から、徒歩10分ほど。
マンションがいくつか並ぶ一室の前まで来ると、
「ただいま〜」
男子生徒が自分の家であろうところの玄関を開ける。
「おかえり〜。早かったのね」
部屋の奥から元気な女性の声がした。
『おかえり』?
『早かったのね』?
どういう事だ?
頭に沢山の?マークを飛ばしながら、智樹は男子学生を見ると、
「あれ俺の母さんの声。な、間違いなく家に母さん家にいただろ?」
と、自信満々だ。
部屋の奥からスリッパの音をさせながら、玄関に向かって走る音がすると、
「おかえり、はやかったのね。…あら、もうお友達できたの?はじめまして環《たまき》の母です」
初めて会う智樹に環の母は笑顔で挨拶する。
「はじめまして。俺、川上智樹と言います。環君とは…」
そこで智樹の言葉は止まった。
友達?
ではないな。
じゃあ、知り合い?
でも出会って30分も経っていない。
じゃあなんて言う?
『う〜ん』と智樹が考えている隙に、
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