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第68話 環が智樹に声を掛けた理由
「なぁ智樹、大丈夫じゃない時、俺には大丈夫じゃないって言って。ま、智樹は顔に出やすいから、分かると思うけど」
環が智樹と体を離し、お互いの顔が見えるようにすると、智樹の片方の頬に手を当てる。
「どうして俺が、智樹を意地でも家に連れて帰ろうとしたかわかるか?」
「わからないから聞こうと思ってた」
「俺が智樹を初めて見た時、智樹、背中丸めて、真っ白な顔してて『こいつ死ぬんじゃないか?』って思った」
「‼︎‼︎」
「だから、意地でも連れて帰ろうと思った」
「俺、死なないよ」
智樹が言うと、
「知ってる。でも本当によかった」
環が智樹の両頬に手を当てる。
「母さんいるから大丈夫だと思ってたけど、『もしも…』って思ったら気が気じゃなかった。だからクラスの奴らが『一緒に遊びに行こう』って声かけてくれたの断って帰ってきたんだけど!」
そういうと、環の掌の中に収まっている智樹の両頬をムギューっと押した。
「これで友達作り失敗したら、智樹のせいだからな。だから……」
そこで環は一度言葉を切って、
「智樹は俺の親友になってよ」
初めて環が智樹に見せた、あの太陽のような笑顔をもう一度智樹に向け、
「お願いします」
と、智樹も華が咲いたような笑顔を環に向けた。
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