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第73話 帰り道 ②
緊張しながらの自己紹介が終わると、早見はピピッと車の鍵を開け、
「智樹君。今日は後に座るだろ?」
後部座席のドアを開けた。
「はい。今日は環もいるので…」
後部座席に環1人を乗せるのは悪いと思い、智樹は開けられたドアから自然に車内に入るが、環はなかなか入らない。
「環?」
智樹の呼びかけにハッとした環が、急いで車の中に入ると、早見が自然にドアを閉め、早見は運転席に座った。
「じゃあ始めは智樹君の家からね」
後部座席の2人の方に振り返り、
「お願いします」
という智樹に笑顔を見せると、車を走らせる。
しばらく行くと、
「2人とも、ご飯食べた?」
信号待ちの時、早見が後ろを振り返り、2人に尋ねた。
「いえ、まだ…」
智樹が答えると、
「じゃあ、ご両親に連絡してからご飯食べて帰る?」
と、早見が提案する。
そこまで早見さんに迷惑かけられない。
智樹は環の意見も聞こうと、環の方をチラッと見た。
「‼︎…環?」
「…ん…?」
緊張してガチガチに固まった環が、まるでロボットダンスをする人のように、小刻みに智樹の方を見る。
「環、大丈夫?顔色悪いし…。車に酔った?」
心配そうに智樹が環に話しかけると、信号が変わり車を走り出させていた早見も、バックミラーごしに環を見た。
「本当だ。すごく顔色が悪いから、車に酔ってしまったみたいだね。少し休憩した方がいいな」
この辺りの地理に詳しいのか?それとも事前に調べてきていたのか、早見が店に向かおうとした時、
「イエ、大丈夫デス。スコシ、キンチョウ…シテル、ダケナノデ…」
環は片言日本語のような喋り方で話す。
うわ…。
これは相当緊張している。
ご飯を食べに行っても、多分、何も喉を通らないだろうな。
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