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第74話 帰り道 ③
「早見さん。俺たちそのまま帰ります。せっかく誘ってくださったのに、すみません…」
智樹が申し訳なさそうに頭を少し下げる。
「いや、いいよ。気にしないで。ご飯食べに行ってたら帰る時間遅くなって、親御さん心配されるよね。気がつかなくて、ごめん」
逆に早見が謝った。
また気を使わせてしまった…
俺、もっといい言い方あったかもしれないな…
早見の反応に智樹も反省する。
そして、また緊張しっぱなしの環を見ると、前方凝視‼︎と前だけ向き微動だにしていない。
このままじゃ、本当に車酔いするな…
どうしたらいいのか…
「智樹君と環君って同じ学年なんだよね」
運転しながら早見が2人に話しかける。
「はい。偶然」
智樹が質問に答えると、
「クラスは同じ?」
また早見が質問しする。
「今日、俺、学校行ってなくてわからないんです…」
また智樹が答える。
「環君、智樹君と同じクラスだといいね」
今度、早見は緊張しまくっている環に声をかけた。
「ハ、ハイ…」
早見の質問に、きちんと環は答える。
「環君。智樹君、運動はダメだけど勉強はよくできるし、教え方上手だから、今度教えてもらったらいいよ」
「なっ!…早見さん、俺が運動ダメって言わなくてもいいじゃないですか!」
苦手分野を早見に暴露されて、智樹は恥ずかしくなり頬を赤らめる。
「だって本当だろ?色々伝説はあるけど、とくに面白いのがボールを使った競技の時間でね。その中でもバレーボールなんて酷いよ」
その時の話を思い出したように、クスクス笑い出す。
「オーバーハンドパスの時、絶対と言っていいほど、おでこでキャッチ、パスをするんだ」
「え⁉︎おでこで…ですか?」
環が驚く。
「そ、おでこ。だからバレーボールの授業の日は、おでこ赤くして帰ってくるし、もちろんアンダーハントパスは後ろパスしかした事ないんだ」
「え!?それ実話ですか!?」
「実話だよ。あ、サッカーの時はね…」
「あ"ーーー!!早見さん、もう言わないでください‼︎」
まだ智樹の気話しをし続けようとする早見の言葉を、智樹が遮った。
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