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第75話 帰り道 ④
「どうして?あんなに伝説的な話しなのに」
早見が言うと、
「え!?その『伝説的な話』って、どんな話しなんですか?」
智樹とは反対に環は早見の話しに食い気味だ。
「聞きたい?」
「聞きたいです!!」
環はシートベルトギリギリまで体を乗り出し、前のめりに早見の方に近づく。
「もー、やめてくださいよー!」
智樹も後部座席から身を乗り出して、後ろから早見の口を塞ごうと手を伸ばすが、
「智樹!!早見さんは運転中!!そんなことしたら危ないだろ!」
環に怒られる。
「それはそうだけどさー…」
伸ばしかけた腕を智樹が引っ込めると、
「それで早見さん、話しの続き教えてください」
環はノリノリで早見の話しを待ち侘びていた。
あ"ーー…
最悪だ。
こんなに早く、俺の黒歴史が暴露されるなんて…
一人仲間外れにされたように、環と早見が楽しそうに話す姿を見て…
そうか!!!!
智樹はある事に気がついた。
早見さんは環の緊張をほぐすために、環が好きそうな俺の話しをしたんだ!!
ネタは俺の暴露話しだったけど、結果的には環の好奇心をくすぐる話しで、ガチガチだった環の緊張が解けたんだ。
大きな口を開けて笑う環の姿に、智樹は安堵する。
さすが早見さん。
なんでもお見通しだ。
早見の凄さを智樹は再認識する一方、
じゃあ俺の浅はかな行動……
気づかない訳ないですよね。
早見さんに対してしている事も、わかってますよね…。
そんな事を思いながら智樹は昔からの友達同士のように話す2人の様子を見、そしてすっかり暗くなってしまった外の景色に目を移した。
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