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第79話 あの日②

やっぱり! 少しフェロモンの香りがすると思ってたんだ。 でも、まだ本格的なヒートになるには早すぎる。 俺の勘違いかと思ってたけど、純也《こいつ》がわかったってことは、俺の勘違いじゃない。 純也はアルファだ。 しかもかなり鼻がいい。 純也が分かり出したということは、『もうすぐヒートがくる』そういうことだ。 「智樹のヒート、まだだいぶん先じゃなかったっけ?」 純也は部活に行く支度をしながら、智樹がいない机の方を見た。 「ああ、まだ先…ってなんでお前が知ってんだよ」 智樹のヒートを把握されているようで、雅樹はムッとする。 「だって俺、智樹のお目付役兼護衛だろ?」 得意げに純也が胸を張ると、 「頼んでねーし、役目全然果たしてねーじゃん」 雅樹が軽く蹴るフリをした。 多分、早見さんが送ってくれてると思う。 だけど、智樹のフェロモンは特殊だから心配だ。 「で、雅樹。お前、部活行くだろ?早く支度しないと、コーチにまた叱られんぞ」 ほぼほぼ部活に行く用意を済ませた純也が、雅樹に声をかけると、 「……。智樹が心配だから、俺、今日休むわ。適当にコーチに言っといて」 それだけ言い残し、「なんて言えってんだよー!」と、叫ぶ純也の前から消えていった。 学校から家まで徒歩で40分のところを、雅樹は止まることなく家まで走って帰った。 陸上部だが短距離選手なので長距離は苦手だが、智樹の事となると雅樹の脳内ではアドレナリンの分泌が盛んになるのか、全く疲れない。 自宅前に着き大きな門を潜ると、またそこから玄関で走り、玄関の鍵を開け、中に入るが玄関には智樹の靴はない。 まだ帰ってない? 「ただいま。智樹いるか?」 靴はなかったが念のため、大きな声で智樹に語りかけるが、智樹からの返事はなく…。 もしかして、部屋で寝てる? 防音設備の整った智樹の部屋を覗くがいない。 いないというより、帰ってきた形跡がない。 おかしいな… 急いで帰ったのに家にいない。 智樹、フェロモン出てる自覚あんのか? 急いで智樹に電話をかけるが、それも繋がらず、徐々に雅樹の心配が強くなる。 《《また》》智樹、何も言わずにどこかに…… 智樹は時々、姿を晦《くら》ます。 そして疲れ切った顔で家に帰ってくる。 雅樹が理由を聞いても教えてくれず、必ず『大丈夫だから、雅樹は何も心配しないで』と、雅樹にキスをし、はぐらかすのだった。 今日こそ理由を聞く!! 前回智樹が急にいなくなり、帰ってきた時、幸樹の香水の香りがしていた。 その時の智樹はいつも以上に疲れていて、帰ってきたその足でベッドに倒れ込むと、夕食も取らずに朝まで眠ってしまっていた事が、雅樹は引っかかって仕方がなかった。 また智樹が姿を晦ませてから、雅樹は何度も電話をかけるが繋がらない。 というか、電源が切られている。 もしかしたらトラブルに巻き込まれた? フェロモン関係してるのか? 智樹への心配ばかりが募り、部屋の中を歩き回っていた。 早見さんが一緒だから大丈夫。 大丈夫…大丈夫……。 雅樹は呪文のように同じ言葉を頭の中で繰り返し、なんとか自分を落ち着かせようとした。 が、そんな事、何の役にもたたない。 心配ばかりが膨らんで、繋がらないスマホを何度も鳴らし… 心配しすぎて胃に穴が空きそうだ。 ツキツキ痛み出す胃をさすり、窓の外を見た。 早見の車が…、智樹の姿がないかと探すために。 今日こそ理由を聞く!! 前回智樹が急にいなくなり、帰ってきた時、幸樹の香水の香りがしていた。 その時の智樹はいつも以上に疲れていて、帰ってきたその足でベッドに倒れ込むと、夕食も取らずに朝まで眠ってしまっていた事が、雅樹は引っかかって仕方がなかった。 また智樹が姿を晦ませてから、雅樹は何度も電話をかけるが繋がらない。 というか、電源が切られている。 もしかしたらトラブルに巻き込まれた? フェロモン関係してるのか? 智樹への心配ばかりが募り、部屋の中を歩き回っていた。 早見さんが一緒だから大丈夫。 大丈夫…大丈夫……。 雅樹は呪文のように同じ言葉を頭の中で繰り返し、なんとか自分を落ち着かせようとした。 が、そんな事、何の役にもたたない。 心配ばかりが膨らんで、繋がらないスマホを何度も鳴らし… 心配しすぎて胃に穴が空きそうだ。 ツキツキ痛み出す胃をさすり、窓の外を見た。 早見の車が…、智樹の姿がないかと探すために。

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