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第87話 入浴 ②

「挿れれ…ないけど…、|素股《これ》は…、でき…る…」 楔同士が擦れ、智樹はもう顔をとろめかしながら、後ろを振り返り、雅樹の顔を見上げた。 ボディーソープで滑りが滑らかになった智樹の楔と雅樹の楔と擦れ合い、2人同時に快楽を与えた。 「…っぁ…、あっ……あぁっ…」 腰を振りながら、智樹の口からは短い声が発せらると、 「…っつ…」 楔を擦られる雅樹の声が智樹の耳で聞こえ、智樹の楔の下で雅樹の楔がドクドクと脈打ち始める。 嬉しい。 雅樹が俺で感じてくれてる… そう思うと、智樹の高揚感が昂り、頭がおかしくなりそうだ。 「まさっ…き……。あっ、…ぅん…」 智樹が振り返り雅樹を見る。 「智樹…、声、聞こえるから…」 「っあ……、はぁっ…ぁぁ……」 気持ちいい… 気持ちいい… 気持ちいい… 智樹の頭はそれしか考えられなくなり、風呂場に響く智樹の声は、徐々に大きくなる。 「智樹、口、押さえんぞ」 そういうと、雅樹は片手で智樹の口を塞ぎ、 「ん"っ……っん…」 もう片方の手で雅樹が智樹の腰を掴むと、雅樹は大きく腰を振り始め、雅樹に口を塞がれた智樹の声は、口の中にとどまっている。 腰がガクガクし始め、足に力が入らなくなってきた智樹は湯船のヘリに捕まりながらも、雅樹の楔と繋がる太腿はきつく閉じた。 擦れる裏筋と睾丸は今にも絶頂を迎えそうだが、雅樹の動きは止まる事がない。 雅樹がイくまで… 雅樹がイくまで… 俺は…イかない……、、 本当は挿れて欲しくて仕方のない後孔はヒクつき、智樹の中も波打つ。 挿れて欲しい… 挿れて…、雅樹…… 口を塞がれたまま智樹が振り返ると、 「智樹…、好きだ…」 「!!」 雅樹は智樹に聞かれていると知らずに、小声で呟き、智樹の心は嬉しさで締め付けられる。 俺も好きだ、雅樹。 この言葉を、雅樹に伝えてもいいんだろうか? 雅樹はの好きと、俺の好きは同じなんだろうか? 知りたい… でも怖い… 『智樹の好きと、俺の好きは違う』。 そう言われるぐらいなら、この気持ちは絶対に隠し通さなければ… 次第に我慢が出来なくなり、智樹が絶頂を迎えようとしたその時、 「智樹…っ」 雅樹の切なそうな声が聞こえ… 「ぁ"ぁぁぁ…あっぁ…」 「っく」 智樹は雅樹に口を塞がれたまま、雅樹は声を押し殺し、2人同時に達した。 湯船に一緒に入った2人は、雅樹が後ろから智樹を抱きしめるように座る。 「気持ちよかった?雅樹」 智樹が後ろを振り返り雅樹を見つめると、 「…。気持ちよかったし……、、智樹が…」 雅樹がフッと智樹から視線を外す。 ん? 何か言いたげ。 なんだろう? 「俺がどうしたって?」 「…」 また雅樹は黙り始めた。 まったく… バツが悪くなると、すぐ黙る。 ……!! いい考え、思いついた! 智樹はあるイジワルを思いつく。 「っつ‼︎智樹!!」 雅樹の前に座っていた智樹が、手を雅樹の楔に当て、中指で行ったり来たりと優しくなぞる。 「言わないと、もっとするから」 中指一本だった指を、中指と薬指の2本にすると、すぐさま硬くなった雅樹の楔は、智樹の背中に当たった。 「ほら、雅樹」 智樹が指の本数を増やそうとした時、 「わかったよ!言うから!言うからソレ止めてくれ」 とうとう雅樹が折れた。 ヤッタ! 「なになに?俺がどうしたって?」 嬉しそうに智樹が雅樹を見つめると、 「智樹が…、可愛すぎた。本気で挿れたいの、我慢したんだからな!」 雅樹が智樹の額を、軽く突いた。 !!!! 雅樹が『本気で挿れたくなった』? それ本気? 俺も雅樹もヒートじゃないのに⁉︎ ヒートの時以外は、セッ○スしたいって微塵も見せない雅樹が? 驚きで智樹は目を丸くすると、 「!!」 雅樹の表情に智樹は驚く。 それはまるで、本当に愛しい人を見つめる瞳。 そのものだった。 「雅樹、キスして」 「!!だって…それは…」 雅樹の顔が曇る。 「して欲しい。あんな無理やりみたいなキスマークじゃなくて、今の雅樹の気持ちを込めたキスをしてほしい…」 熱を帯びた瞳で智樹が雅樹を見つめ、そして目を瞑ると、優しく智樹の唇に雅樹の唇が触れた。 触れただけのキス。 セッ○スの時のような濃厚なものではなく、優しいキス。 昔、もういつだったか忘れるくらい幼かった頃にしたキスのようだ。 こんなキス、いつぶりだろう? 唇から伝わる雅樹の優しい気持ちが、智樹になだれ込んでくる。 「壊したくないんだ。智樹のこと…」 雅樹は切なそうに智樹を見た。 「俺《《なんか》》で汚《けが》したくないんだ、智樹のこと…」 雅樹の瞳が智樹には潤んで見え… それってどういう意味? 「雅樹、それって……」 智樹が聴きかけた時、洗面所のドアを叩く時音がして、 「2人とも溺れてない?」 と、母親の声がした。 「寝たらダメよ」 続け様に2人にまた一言声をかけ、その場を離れる気配がした。 「上がろう、智樹。母さんが心配してる」 湯船から立ち上がった雅樹が、智樹の手を引っ張り上げる。 「…そうだな…」 結局、智樹は雅樹の本当の気持ちを聞けなかった。

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