15 / 68
第15話 薫に会いたい
晶は薫の家の門の前で、立ちすくんでいた。
チャイムを鳴らそうと指を近づけるが、指が震えて途中で止まる。
せめて薫に線香あげたい……
もう一度チャイムを鳴らそうとした時、
‼︎
晶は薫の家の窓から視線を感じた。
あ……、ママさんだ……
視線の先には薫の母がいて、晶と目が合うと分厚いカーテンを閉め、晶に中の様子がわからないようにする。
今日も…
線香あげられなかった…
晶はため息をつくと、今度はある場所に向かう。
薫の葬式。
晶は出席できなかった。
薫の母が出席させてくれなかったからだ。
息子の死に直接関係なくても、晶の誕生パーティーの準備中に起きた事故。
母の気持ちを考えると、晶に出席して欲しくなかったとしても、晶はせめて線香だけはあげさせて欲しかった。
今日はまだ早いからお墓の方に行かせてもらおう…
晶は線香も花も持たずに、薫が眠る墓地へ行く。
そこは電車で二駅、そこから少し離れた場所にある。
いくら夏が日が長いからといって、晶が墓地に着いた時は、日が沈みかけていた。
セミの声が鳴り響く中、晶は薫の墓跡の前に来ると手を合わせる。
薫、ごめんな、今日も手ぶらで。
本当はさ、花とか線香とか持ってきたいんだけど、ここに俺がきてるってママさんにバレたら、ここにもこれなくなっちまうだろ?
それだけは避けたいんだ。
そうしないと俺は、一体どこで薫に会えるんだよ……
晶の頬に涙が伝う。
神谷先輩、俺たちの事忘れちゃってるけどさ、それって一時的なものだって、病院の先生言ってたし、先輩が薫の事忘れるなんてありえねーから、心配するなよ。
あとさ、学校で………
晶は今日の出来事を、薫に報告する。
ただ単に、一人心の中でしゃべっているだけだが、晶には薫がその話を聞いてくれてるんじゃないかと思ったから。
ひとしきり話終わると、
「じゃあ、また来るから」
そう言って、また来た道を帰り、今度こそ自分の家に向かうのだった。
ともだちにシェアしよう!