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第29話 焼肉定食

「先輩、お腹空きません?」 ホラー映画を観たからか、晶のお腹の減りはマックスだ。 「空いたな…。松原は何食べたい?」 「焼肉」 「え⁉︎あんなホラー観た後に、肉、食えるの?」 今度は神谷が信じられないと晶を見る。 「それとこれとは、話が別です。とにかくお腹に何か入れたいです。でないと倒れそうです」 「え⁉︎まじで⁉︎」 神谷は大急ぎでスマホを取り出し、ランチをしている焼肉屋を探し出すと、 「行くぞ!」 晶の手を引いて走り出した。 神谷が探し出した焼肉定食がある店は、近くに大学があるからだろうか、2人が頼んだ『スタミナ焼肉定食』の量は凄まじかった。 山盛りライスはに味噌汁はおかわり自由。 肉も添えられているキャベツの千切りも山盛りすぎて、皿から溢れそう。 「先に言っておきますけど、これはあげませんからね」 晶が神谷を威嚇する。 「食べねーよ。ご飯だっておかわり自由って言ってたし」 「じゃあ安心して…、いただきます」 手を合わせて晶が食べ出すが、神谷は 「先輩は食べないんですか?」 食べている晶の方を見て、微笑んでいる。 「美味しいですよ、本当に。食べたい物食べれるって、幸せですよね」 幸せそうに食べる晶を神谷は見つめ、 「俺たちってさ、あの日の前もこうやってたべてたのか?」 今度は少し寂しそうな目で晶を見た。 楽しかったですよ。 先輩がいて、 薫がいて、 俺がいて…。 「そうですね。ここに薫もいて。でも、今も楽しいですよ、先輩と一緒なんで」 そういうと、晶はまた一口肉を口に運んだ。 「そっか…。やっぱり3人か…」 神谷は少し寂しげに目を伏せてから 「いただきます」 一瞬何かを飲み込んだように見えたが、何事もなかったかのように食べ始めた。

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