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第33話 体調不良 ①
先輩の様子が明らかにおかしい。
顔色が悪いし、何より表情が辛そうだ。
「先輩、絶対体調悪いですよね」
心配した晶が神谷の顔を覗き込むが、
「平気」
それだけ言って、神谷は精一杯の作り笑いをする。
俺がどれだけ先輩のこと見てきたと思ってるんですか?
先輩が隠そうとしても、辛そうな様子はすぐわかるんです。
「もう今日は帰りませんか?」
晶は近くにあったベンチに神谷を座らせた。
「帰らない」
そう言った神谷の顔色は、ますます悪くなる。
「こんなに顔色悪くて…。横にならないとダメですって」
晶が説得しようとするが、
「嫌だ。帰らない」
神谷はこの一点張り。
困ったな…
なんでこんなに頑 ななんだよ。
「デート終わるのが、松原が帰ってしまうのが…嫌なんだ」
もう体力が限界なのか、神谷は頭を項垂れさせる。
「わかりました。俺、先輩ん家 まで一緒にいきますから…ね。帰りましょ」
晶が神谷を宥めるが、
「俺ん家でも一緒にいてくれないと嫌だ」
神谷がごねる。
なんの我儘だよ…
でも、ちょっと可愛いから…
「いいですよ。先輩が納得するまで一緒にいます」
少しコシのある神谷の髪を、晶が撫でる。
「じゃあ帰る」
神谷が言うと、やれやれと晶は笑いタクシーを拾った。
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