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第54話 ⁉︎⁉︎ ③

どうやって神谷と別れ、どうやって帰って来たのだろう… そんなこともわからないまま、気がつくと晶は自分が住むマンションの前に立っていた。 多分、今、すごい顔色してると思う。 こんな顔、母さんに見られたら心配させてしまう… できるだけ顔を合わせないようにしないと… 「ただいま…」 晶は母親になるべく顔を見られないように、ダイニングを横切ろうとした。 「おかえり、今日お爺ちゃんから『夏休み従兄弟の朝日くん来るから、晶も遊びにこないか?』って、電話があったんだけど……それより、晶どうしたの?顔色悪いわよ」 夕食を作っていた晶の母親が、料理の手を止めて晶に近づいてくる。 やっぱり気付かれた… 「大丈夫」 「でも…」 母親は心配そうに晶の顔を覗き込む。 これは、大丈夫って言い続けても信じてもらえないパターンだな…… 「大丈夫だって。それより、爺ちゃんからの電話の話、聞かせてよ」 晶はあえて元気に振る舞い、話題を変えた。 「……本当に大丈夫?」 母親は尚も晶に聞く。 「母さんは心配しすぎ」 晶が微笑むと、母親は少し安心したようだ。 「それで、爺ちゃんはなんて?」 「晶、去年は受験で会えなかったから、お爺ちゃんもお婆ちゃんも寂しかったみたい。だから今年は少しでもいいから、顔見せて欲しいって」 そういえば、毎年夏休みは爺ちゃんの家にいってたもんな… 自然が多くて、あそこ好きなんだ。 あの星空見てたら、悩み事なんて、どうでもよくなってくるし…… 「考えておくよ」 晶はそう言って自分の部屋に入っていった。 その日、神谷からLI○Eや着信があっても、何と返信すればいいか、 何を話せばいいか分からず、結局晶は、返信も折り返しの電話もしなかった。

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