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第57話 避ける ①
その日から晶は神谷を避けるようになった。
いや、避けるというより、合わせる顔がなかった。
どんな顔して、どんな風に話しかけ、どんな風に接するか…
わからない。
毎日、毎日、神谷に会わないように朝早くに家を出て、昼休みは毎回使われていない教室で一人で弁当を食べ、授業が終わった瞬間、逃げるように学校を出た。
これじゃあ、まるで俺が傷つけられた人みたいに振る舞ってる。
違うんだ。
俺が傷つけたんだ。
俺が……
晶が神谷を避けるようになった直後は、神谷も晶のことを探していたが、それも徐々になくなり、やがて2人は顔を合わせることもなくなった。
「晶、最近神谷先輩と出かけないわね。喧嘩でもしたの?」
日曜、家でゴロゴロしている晶を、心配そうに母親が見た。
「喧嘩っていうか…、先輩受験生だし、そんなに毎週毎週俺となんて遊べないよ」
晶は嘘に嘘を塗り重ねていく。
本当と、嘘と、自分に言い聞かせる言い訳。
もう何が本当で、何が嘘で何が言い訳なのか、わからなくなってきてもいた。
「そう…?ねぇ晶」
「ん?」
「今年の夏休み、やっぱりお爺ちゃんの家にいってらっしゃい。いい気分転換になると思うわよ」
爺ちゃんの家……
……。
そうすることが一番だ。
先輩にとっても、俺にとっても…
「うん。今年は行くよ」
晶はある事を決めた。
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