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第73話 引越し祝い ①
次の日、出社した真司は野宮にそっとお礼を言って合鍵を返すと、
「すぐに仲直りできてよかったな。お前はいい奴だから、絶対うまくいくって」
いつものように野宮が笑う。
「あ、それで、これ。遅くなったけど引っ越し祝い」
野宮はゴソゴソと紙袋を取り出し、真司に渡した。
「え⁉︎そんな…悪いよ」
「いいって。受けとれよ。でも、開ける時に条件がある」
野宮がにやりと笑い、周りに誰もいないことを確認する。
「絶対に家に帰って、彼女と一緒の時に開ける!これが絶対条件」
「なにそれ。変なものじゃないだろうな…」
真司は野宮に疑いの目を向ける。
「違うって。実用性の高いもの。二人で使えるものだから大丈夫」
実用性があって、二人で使えるもの…
蓮に隠さないといけないものではなさそうだ。
でも条件付きの引っ越し祝いなんて聞いたことない。
「じゃあ、そういうことだから、すぐにロッカーにしまっておけよ」
野宮は真司をロッカーの方へ押していった。
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