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第99話 すれ違う2人 ⑥
「それで、言う気になったか?」
アルコールに強い野宮は、全く顔色を変えず、ほぼ素面に近い。
「…俺、最近、蓮に避けられてるみたいでさ…」
野宮に引き換え、真司はベロベロになっていた。
「お前の彼女、蓮ちゃんっていうんだ…それで、なんで避けられてると思った?」
「前は…どんなに忙しくても、朝食一緒に食べてたのに、最近一緒に食べてないし…帰りが遅い時は、もっと早くに連絡くれたのに、その連絡くれるのも遅くなったし…それに…」
「それに、どうした?」
野宮はベロベロになっている真司の顔をしっかと見て、真司の話を聞く。
「それに、今日、仕事で遅くなるから会社の近くのビジネスホテルに泊まるって…直接俺にいうんじゃなくて、メモ書きで置いてあったり…」
真司は今朝のことを思い出して、顔をうな垂れさせた。
「まー、一緒に住んでたら色々あるだろうけど、お前は何が一番嫌なんだ?仕事で帰りが遅い事?朝食を一緒に食べれない事?連絡してくれるのが遅い事?ホテルに泊まること?それとも、今日のことメモ書きで知らせた事?」
「それもあるけど…」
「けど?」
「けど、一番嫌な事は、いつも近くにいるのに、一人何か思い詰めて、俺を避けて何も話してくれないこと…」
「そう思うのか?」
「俺、頼りないけど、もっと頼って欲しい…蓮には蓮の考えがあるけど、一人で抱え込まないで欲しい…」
「佐々木、お前はいい奴だし、頼りがいある。自信を持て」
野宮は真司の肩をバンバンと叩く。
「だったらなんで避けるんだよ…今日だって電話したのに折り返しないしさ…」
「蓮ちゃん、仕事忙しいんだろ?じゃあ、無理じゃん。お前も仕事忙しい時、無理だろ?」
「…たしかに…」
「それに、そんなに気になるなら本人に直接聞くのが一番早くて、一番正確。いくら一人で考えても、それは憶測であって本当のところはわからないだろ?」
「…うん…って俺、今野宮に説教されてる?」
「これは説教じゃない。正論を解かれている」
「なにそれ」
真司はさっきまで暗い気持ちだったが、野宮に聞いてもらう事で、心がどんどん軽くなっていった。
「お前にだって、言えない事、一つや二つはあるだろ?全部知りたいなんて欲張りだ」
「…」
「今回、色々な事が重なってるみたいだけど、お前はどうしたい?」
俺はどうしたい?
どうしたいって…
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