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第102話 蓮の本当の思い ①
次、蓮との真司の休みが同じ時は、真司が母親に会う日だった。
それまで、二人ゆっくり話する時間はない…
だったら…
その日も蓮は仕事で帰ってくるのが遅いと連絡があったが、真司は蓮の帰りを待つことにした。
「ただいま…」
静かに玄関のドアが開く音がした。
「おかえり」
「‼︎真司起きてたの?」
真司が玄関まで出迎えると、驚いた蓮が立ち止まり、バツが悪そうにする。
「今日も遅くなって、ごめん…」
蓮は真司から目を逸らしながら謝った。
「いいよ。きにしないで。それより中に入ろう」
立ち止まってから、動こうとしない蓮の手を握って、真司はリビングのソファーへと連れていき、二人隣り合うように座った。
「蓮、今度、おれの母さんに会うの…」
真司のその言葉を聞いて、蓮がびくっとする。
「やっぱり辞めないか?」
「え⁉︎」
さっきまで俯いていた蓮が顔をあげる。
「でも真司。俺が真司のお母さんと会うって言ったら、あんなに喜んでたのに…どうして?」
「それより大事な事があるから」
「それより大事な事?」
不思議そうに蓮が真司を見る。
「蓮と俺との事…」
「…」
真司はソファーから降り、床に膝をつけると蓮の手を握り、蓮の顔を覗き込んだ。
「蓮…俺の事避けてないか?」
「‼︎それは…」
蓮は真司と視線が合わないようにする。
「蓮、その事を怒ってるんじゃないよ。ただ、どうして避けるのか…俺が蓮を傷付けるような事をしてしまったのか…その原因を知って、謝りたいんだ」
「!真司は何も悪くない」
真司に握られた手に、蓮は力をこめた。
「じゃあどうして…」
「……」
真司の問いかけに、また蓮は口籠ってしまった。
この話は蓮に無理強いしてする話じゃない。
ゆっくり時間をかけてしよう。
「蓮、今日はもう遅いから、この続きは日曜にしよう」
真司は蓮の手を引きながら立ちあがろうとしたが、蓮は立ち上がろうとしない。
「蓮?」
「真司、今聞いてくれる?」
立ち上がっている真司を蓮が見上げた。
「わかった…ゆっくりでいいから教えて」
真司はソファーに座る蓮の隣に、もう一度座った。
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