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トモノリ9cm(39才)

人の欲には底がないと言う。 たしかに今まで生きてきたなかで最高の尺八を思い返してみても底を打ったかといわれれば、まだまだ先があるように思う。 尺られるほうもそうだろう。 今までで最高の快樂を感じたとしても、まだまだ、もっともっとと刺激を求めてしまうに違いない。 度し難いとまでは言うまい。 オレはただ、オレを快楽のドン底まで突き落とす尺八を成し遂げたくて生きている。 オレの顧客には若い世代は少ない。 気軽に遊び気分で依頼できないように敢えて報酬を高めに設定しているのもあるが、世渡りを覚え始めたヒヨッコにはこういう遊びはハードルが高いのだろう。 そんなわけで、今回の依頼は顧客のなかでは比較的若年の39才の独身者からだという。 写真からは肌の艶は感じられるが少したるんだ顎のラインが気になる。 しかし、これだけで判断できるほど尺八と竿の世界は単純ではない。 剥いてみないと事実は知り得ない。 錦糸町に来るのは久しぶりだ。 指定されたホテルもどこかやさぐれた雰囲気が街の匂いを引き写しているように感じる。 部屋の前でチャイムを鳴らす。 ドアを開けた男は垂れてくる前髪を払いながらにんまりと笑う。 オレより拳二つほど低い頭のてっぺんは皮脂の照り返しがテラテラと光る。 無遠慮に部屋に入る。 ベッドの上にタブレット端末。 画面の中でムキムキマッチョがサングラスの男に尺られている。 気分は十分に盛り上げてあるということか。 振り返ると依頼者の男はタブレットとオレを交互に見てニヤニヤと笑いを浮かべている。 年齢からすると少々突き出しが多い腹周りがポロシャツをパツパツに張らせている。 「シャワー、済ましてくれ」 一言で済ませてタバコに火を点ける。 ドタバタと服を脱ぎバスルームに消える男。 せいぜい念入りに洗うがいい。 流石に風呂あがりの姿は先程よりは小ざっぱりしている。 「どこで尺る?」 尋ねると男はこう言う。 「ベッドで、それでなんですけど、しゃぶってもらう前に、これ、入れてもらえますか?」 男が差し出したのはピンク色のL字フックのようなもの。 表面を覆うシリコンの質感が健康器具の雰囲気を纏うが、ようするにアナルバイブだ。 「悪いがそれは提供内容に入ってないな」 にべもなく断ると、下卑た笑いを浮かべた男は「そうですよね、自分で入れますから、少し待っててください」と勝手にベッドに横たわる。 オレに言わせれば、老舗のブラウニーにHERSHEYのソースをブッかけるようなものだが、好きにするがいい。 両手を自分の膝の裏に回し込み、容器からトロリとしたローションをひり出すと人差し指と中指でたっぷりと掬う。 もんまり状態のアヌスに念入りにローションを練り込んだかと思うと、ピンク色のバイブをあてがい唸り声とともに挿入する。 「う、うぉぉ、くっ、深いっ、くっ」 膝を下ろし脱力する男。 「始めていいか?」 尋ねると陶然とした表情で頷く男。 男の竿を右手で手にとる。 先汁がベトベトにまとわりついているわりに、まだ3分勃ち。 俗に掘られている最中のネコはフニャ竿が当たり前という。 だがオレの仕事は尺りだ。 これからこの竿にどうやって血を入れていくか。 まだこんにゃくほどの弾力もない竿をいきなりクチにふくむ。 頬張った竿を唇と舌をむにゅむにゅと動かし揉みしだく。 クチの中で上へ下へ右へ左へオレの舌が蠢く。 徐々に竿に血が入っていく。 五分勃ちほどになったところで突然低いモーター音がうなり始める。 男の手にはリモコンが握られている。 バイブのスイッチを入れたのだ。 なかなか余裕を見せてくれる。 尺れるだけの張りが出てきたところでストローク開始。 勃ちを上げるため、唇をきつめにすぼめて竿の中程までのミドルピッチでストローク。 いわゆる風俗尺八。 精を放つためだけのクチコキ。 それでもこういうイキった客の竿を煽るには効果的。 みるみる竿に血が漲る。 淡々とそのままストローク。 やがて本勃ち。 目測9cm。 血色とずんぐりとした太さが輸入モノのウインナーソーセージのようだ。 このまま深飲み込みでフィニッシュに持ち込んでもかまわない、そう思っているとバイブが唸り声を変える。 ヴヴヴヴヴヴという振動音に加え、キュインキュインキュインキュインとシャフトがくねる音を相乗させる。 男の直腸に差し込まれたアナルロッドがその身をくねらせはじめたのだろう。 「ほぉぉぅうう」 男から歓喜の声が漏れる。 リモコンを手から取り落とす。 なるほど、こうなればもう恥も外聞もない。 湯だったヒキガエルのようにヒクついて伸びる男。 請け負った仕事は完遂するのがオレの流儀。 攻め方を変えず風俗尺八を続行。 カリの前後に唇がフィットする発射専用クチコキ 。 シュポシュポシュポシュポシュポシュポと間抜けな音がする。 「だぁめぇぇぇぇぇ」 男は精を放った。 びっピッと軽く痙攣。 ドロリと濃いめだが気持ち少量。 後ピクもほとんどなく沈静化。 こういう精は舌に絡みやすく吐き出すのに難儀する。 ティッシュで舌の上をこそぐように拭き取る。 「あとはよろしく」 ぜーぜーと息をつきながら打ち上がる男を尻目に退室。 ひとり、余韻もなく歩く。 このまましばらく歩いて亀戸で餃子でも食って帰るか。 このあとも、明日も、尺り仕事の予定はない。 口直しの尺八をできるほどにオレも暢気な考えになれたらいいのに。

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