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ヒロシ10cm(56才)
竿師というのは一般的には女を喜ばせる男のことを言うのだろう。
お目にかかったことはないがこの稼業をやってれば少しは噂も耳にする。
オレはオレの竿で誰かを喜ばせることはしない。
オレが満足のいく尺八をできたとき、男は喜ぶか、泣くか、そのどちらかなのだろう。
そう思っていた。
高輪の丘の上にある老舗ホテル。
小綺麗な為りをしていても聞こえてくるのは海外の言葉ばかりだ。
部屋に向かう。
ドアを開けたときに顔をのぞかせた男は、事前に見た写真とは少しばかり印象が違っているように感じた。
「おお、あんたか、尺八屋ってのは」
写真では風彩のあがらないくたびれた初老の男に見えた。
ところが、禿げ上がった頭はぎらりと艶を放っているし、それよりも全身から放たれる精気のようなものがオレを圧してくる。
オレのなかで何かがひっかかる。
知っている男か?
いや。
「そう呼ばれてるらしいね」
とりあえず取り繕い部屋に入る。
ドアを閉めた男は瞬く間に服を脱いでいく。
白いくたびれたブリーフが哀愁を誘うが、これもこちらを油断させるための仕掛けかもしれないと思う。
調子がおかしい。
バスルームからはシャワーの音に混じって男の鼻歌が漏れてくる。
なにもかもがオレの神経を逆撫でしてくるように感じる。
バスローブの前をはだけたままベッドに軽やかにあがった男は、お座りを覚えたての赤ん坊のような格好で股を開いて座り込む。
見た目よりも柔軟な身体をしている。
何者だろうか。
「ほら、まあ見てな」
だらしなく袋に張り付いていた竿を指差す。
見ているうちにむくむくと勃ちあがっていく竿。
男は触りもしごきもしていない。
あっという間に八分勃ち。
相手のペースに乗せられていることが不愉快で、オレは男の股ぐらにかがみこみ一息に根本まで飲み込む。
大した大きさではない。
だが、硬い。
炉から取り出し鍛えたばかりの鋼のように、熱く、硬い。
最初からフルストローク。
「ほお」
男が見下ろす。
じゅっぷじゅっぷと激しく尺る。
男の竿はクチの中で熱を発しているようだ。
びんびんと跳ねる。
ここまで硬い竿にはなかなかお目にかかれない。
おそらく竿の血の巡りが異常に激しいのだろう。
尺ってるだけなのに竿にまとわりつく血管が強く脈うっているのを感じる。
亀頭の先から根元までガチガチに張り詰めている。
頭の中が白くなっていく。
銜え方を浅くしてカリの段差を唇でこそぎあげる。
すぼめた唇でカリをひっかけて、引き上げては舐めおろす。
執拗に、何度も、繰り返す。
男の亀頭は暴力的に硬い。
オレの舌の蠕きもすべて跳ね返す。
「そうそう、その調子」
男に焦りの色は見えない。
男の竿のことで頭が一杯になる。
大きくゆったりとしたストローク。
ぐぽん、ぐぽんと竿を尺る。
それでもなおクチのなかで暴れる竿。
これではまるでオレのクチを竿でおかされているようだ。
オレの腰が万遍なく疼いている。
亀頭を満腔でふくみ、舌を縦横無尽に動かす。
全方位からねぶりあげられる亀頭。
心持ち、膨らんだ気がする。
再び根元まで飲み込み、深く吸い込みながらねぶりあげる。
ぬーっぽ、ぬーっぽ、と。
先っぽまで戻ればすぼめた唇をぴったりと竿になぞるようにして根元までどちゅんっと振り下ろす。
そのコンビネーション。
ぬーっぽ、どちゅっ、ぬーっぽ、どちゅっ、ぬーっぽ、どちゅっ、ぬーっぽ。
くそ、まったく手応えを感じない。
効いているのはこちらだけか。
オレの股ぐらは既に熱がこもって蒸れている。
締め付けられて苦しい。
今すぐズボンを脱いで解き放ちたい。
考える余裕はない。
一心不乱にフルストローク。
竿に少しでも密着させ、摩擦係数をあげるためにオレの唾液と男の先汁をじゅるじゅると飲み込む。
俗に言う真空バキュームコキ。
しゃくる。
コく。
奴隷のようなクチコキ。
そう、これはクチコキだ。
ただ終わらせるためだけのクチコキだ。
ちくしょう、なにが尺八屋だ、これじゃオレが尺らされてるどころかただのマシーンじゃないか。
裏腹に股ぐらの熱は上昇し続け、オレの袋がぱんぱんに張ってきて窮屈だ。
男が腰を持ち上げて竿を突き出す。
中途半端なブリッジのような姿勢。
男の尻を抱え込み啄木鳥のようなハイスピードフルストローク。
う、う、う、う、と漏れているのはオレの呻き声か。
おかしつくされたオレのクチは感覚が麻痺しはじめて、ただ竿をコく筒と化した。
もう生き物ではなく肉オナホに過ぎない。
「ほっ、ほっ、ほれ♥出すぞ♥」
男の竿がいきなり膨れ上がる。
本勃ちで10cmだった竿が亀頭を中心に一回りふくらみ、さらに俺のくちをなぶる。
男はたっぷりとした余裕をみせて発射。
まさに弾丸の発射。
びっびっと喉奥を撃ち抜く、精の弾丸。
二回跳ねたあと、どばっと追い打ち。
びゅうっとたっぷりしたフロー。
軽く大さじ一杯はある。
支えきれず飲み下す。
男の竿を抜き、両手をベッドに突いて肩で息をする。
腰を落ち着けた男はベッドサイドからタバコを手に取りくちにくわえる。
「いやあ、若いのにたいしたもんだなあ、あんた」
火を点けながらほのぼのと言い放つ。
思い出した。
どこかで見た顔と思ったのは、ネットで見たハードコアビデオだ。
若くて乳房のでかいだけの女をとことんコマしていたじじい。
たしか、この顔をしていた、はず。
「ごくろうさん、楽しかったよ」
ひらひらと手をふる男。
手強い相手だった。
おそらく素人相手なら一時間でもそうしていられるはず。
それよりも、自分の都合で自在に精を放てる余裕がある。
気になったのは、オレの尺八を熱望したのではなくちょっとお使いといった空気が漂っていたこと。
オレの預かり知らぬところで何かが動いてる?
考えてもはじまらない。
品川まで歩こう。
こんなにささくれた気分は水族館の水槽でも眺めないと鎮まりそうにない。
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