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ワガママ王子と悪戯猫(4)

「悠さんが温めてくれるんじゃなかったんですか。寒いです」 抱えられたはずみに毛布と例のシャツが肩から落ちて、肌が露わになった。 そこから少しずつ体が冷えていく。 「そうだったな。……ほら、これで暖かいだろ」 足元に丸まっていた掛け布団を掛け直して、もう一度、今度は正面から俺を抱きしめる。 「ん?……おい颯人、もう温まってんじゃねぇか」 悠さんがぎゅっと俺を抱き寄せて体を密着させるから、俺のソレがテントを張って存在を主張しているのがバレた。 「だって、お風呂入ったら当然温まりますよ」 俺は照れ隠しにそ知らぬ顔で反論する。 「風呂じゃなくて……」 言いかけた悠さんは、しかしにやりと笑って言葉を切った。 「そうだな、今日は寒いし、風呂気持ち良かったろ?」 「良いお湯でした」 「うんうん、それは良かった。じゃ、冷めないうちに寝ようぜ」 何を考えているのか、悠さんはその腕の中に俺を閉じ込めたまま、部屋の明かりを暗くした。 「おやすみ」 「おやすみなさい」 ため息のように囁きあって、常夜灯のわずかな明かりでおやすみのキスをした。 それきり。 それきりで、悠さんは黙って俺を抱きしめている。 たぶん目も閉じてるんだろう。 ちょっと! ちょっと酷くないですか! 俺は悠さんの香りのせいで、こんなに熱くなってるのに。 俺がちょっとひねくれたら、知らんぷりですか?! 悠さんは、俺を抱きしめてぴったり体を合わせたままピクリともせず、ただ熱だけを伝えてくる。 そんなの、そんなの……人形じゃないんだから、じっとなんてしてられない。 悠さんとは、まだ数えるほどしか体を重ねていないけれど、それでも、悠さんの香りで俺は欲情するし、悠さんの体温で溶けだした理性がしっとりと体を濡らす。 言うのか? 俺から誘うのか? 「……ゆ、う、さん」 返事の代わりに悠さんの長い指が俺の顎下をくすぐるから、その指を絡めとって関節にキスをした。 「なんだよ、颯人?」 優しい声音で悠さんが促す。 「……もっと、抱きしめて、欲しい、です」 今の俺にはこれが精一杯だ。 鼓動が激しすぎて、微かな声しか出ないから、悠さんの耳元で囁く。 悠さんが同様に小声で笑う。 「違うだろ颯人、したいんだろ?」 「えーと、その……」 悠さんは機嫌よく俺の額にキスを返して続ける。 「俺だって颯人ともっと仲良くしてぇよ?……だからさ颯人」 ぴったりくっついた腰を揺らす。 「俺のこと悠って呼び捨ててよ。タメ口きいてよ」 思いもよらない要求に、俺は暗がりの中赤面した。

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