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ワガママ王子と悪戯猫(5)

ぱちゅん、ぱちゅんと湿った音を立てて悠さんが俺を穿つ。 「なあ、はや、と、っ、呼べよ!」 悠さんが熱く荒い息を吐くたびに、俺はひくついて悠さんを締め付ける。 「ん、ぅっ、んっ」 また敏感なところを抉られて、快楽の果実がいくつかはじけ飛び、体内が溶けそうなくらいの愉悦の蜜が零れだす。 「ま、待っっ、て、まだイって、ますぅ、っ」 頭がおかしくなりそうな絶頂に次ぐ絶頂が、吐精もせずに昇りつめた俺の体を縛り上げる。 悠さん自身を欲深く咥えこんで、精液の代わりに、開きっぱなしの口許から勝手に涎が零れる。 そんなあさましい俺の姿を視て、悠さんは腰を止めず満足そうに笑った。 「ははっ、可愛いぜ、颯人っ、!」 「や、ぁっ、可愛くなぁっ、見ない、れっ」 こわばってろくに回らぬ舌で懇願し、震える手をかざして顔を隠す。 するとワガママ王子が不満げにその手を掴んだ。 「邪魔。颯人の可愛い顔が見えないだろ」 左右ともに掴んで、俺の頭の上で押さえつける。 「なっ、恥ずか、しい、からぁっ!」 悠さんの視線を遮れなくなって、かぁっと顔に血が上る。 代わりに横を向いて悠さんの視線から逃げると、悠さんがその凛々しく整った顔をにやりと歪めた。 「颯人、こっち向いて。キスできねぇぞ」 「んっ、らめ、ゃらぁ……いじわる、しないで……」 見られるのは恥ずかしいけど、悠さんのキスは欲しい。 さんざん葛藤して、ちょっとだけ顔を上に向けてチラッと横目で悠さんを見上げた。 悠さんと目が合って、にっこり微笑まれる。 思わずその笑顔に見惚れ気がそれたタイミングで、容赦なく連続して突き上げられて、俺は背中が弓なりに反ってしまうのを止められない。 「ん、く、ぅぅっ……」 快楽に呻いて、仰向いたところに悠さんが噛みつくように口づけてくる。 濡れた頬を舌で拭って、唇に柔く牙を立てて、溶けて一体になりそうなほどに舌を絡めあう。 俺は、もっと、もっとと欲しがって、甘い息を吐いた。 欲しがる俺がお気に召したのか、王子は上機嫌でキスをくれる。 しかし。 そこへ突然、耳障りなバイブ音が、とろけるように熱く甘い空気を無粋にもつんざいた。 サイドボードの上に置いた悠さんの携帯が振動音を発している。 「ん、悠さ、ん。でんわ……」 雑音に興をそがれた悠さんは、不機嫌面で電話の呼び出し音を切り、携帯をラグの上に払い落とした。 その後も何度かバイブ音が続いていたが、悠さんの耳には入らないようだった。 「颯人、『悠さん』じゃないだろ?『悠』だろ?俺の言うことが聞けない悪い子は……」 棘を持つ美しい薔薇は、微笑んで優しい罰を与えた。

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