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ワガママ王子と悪戯猫(6)
「おはよ、颯人」
「おはよ、ございます……」
まだぼんやりと眠りから覚めやらぬ頭を上げて、眠い目をこすりこすりベッドの上で体を起こした。
焦点が定まらずぼやける視界に映るのは、至って機嫌のよい悠さんだ。
あぁ、今日も男前ですね……ところでなんでここに悠さんいるんですか?あれ、なんだっけ……。ここはどこ?
起き抜けの頭から昨日の記憶を引っ張り出そうとするけれど、何かに引っかかっているようでなかなか出てこない。
窓から陽の光が入って明るく暖かいベッドの上で、小さくあくびを一つ。
「朝飯!作ってきたぞ。食おうぜ」
にっこにこの笑みを浮かべた悠さんは、持っていたトレイをサイドテーブルに置いた。
ベッドに腰を下ろし、ついでにテーブルを引き寄せて、悠さんはスプーンで一匙コーンポタージュをすくって俺の口許に運んだ。
「ぇ、あ、いただきます……」
与えられるままにありがたくいただいて、ポタージュとロールパン、スクランブルドエッグ、サラダを少し腹に納める。
「美味しい、です……」
「だろ?……へへ」
嬉しそうな悠さんの笑顔。
夢か現か未だ分からないけれど、この温かくて幸せな朝食は現実だと思いたい。
「大丈夫か颯人?起きてるか?なんかぼーっとしてねぇ?」
食器を片づけてきた悠さんが心配そうに俺の顔を覗きこむ。
「なんだか……夢の中にいるみたいで……悠さんが優しいし……」
「馬鹿言うな、夢で片付けられちゃたまんねぇよ。俺はもともと優しいし、颯人は今起きてる。昨日の夜メ○イキしまくったのも夢じゃない、現実だ。ほら」
心外だとでも言いたそうな顔をした悠さんは、『ほら』のところで真顔のまま手をのばして、俺が着ているシャツの裾をめくった。
「~~っ!!悠さん?!」
朝勃ちしていた息子と思わぬ再会をはたして、俺は思わず手近にあった枕を悠さんの顔に向かって投げた。
「あはっ。照れんなよ。俺は下穿かせようとしたぜ?でも颯人がつながったまま眠りたいってっっ!……っあっぶねーなぁ、もぅ」
二個目の枕を顔面すれすれで受け止めて、悠さんが笑う。
「だーいじょうぶだって。メ○イキしてる颯人もやっぱり可愛かったから、さ。さすがに動画は撮れないから、颯人には見せらんないのが残念だけどっ……!ははっ!弾切れだな!」
枕を投げつけようとしたけれど、もう二つとも悠さんの手元にあるのを見て、俺は怒りと恥辱に唇を噛む。
俺がそんな、つ、つなが……ったまま寝たい……、なんて破廉恥なこと言うはずがない。
悠さんがからかっただけだ、そうに違いない。
「いいじゃん、そのシャツすげー似合ってる。寝間着にやるよ。寝る前は必ず一汗かかなきゃならないけどな」
悠さんは俺を抱き寄せて自分の膝の上に座らせる。
裾が長いおかげで、悠さんとの間にシャツが挟まっているとはいえ、下着がないと落ち着かない。
「昨日の夜さ、俺、すっげー久々にぐっすり寝た。朝もすっきり目が覚めたし。颯人のおかげ。ありがとな」
悠さんがいい雰囲気で何か言っているのだけれど、俺は剥き出しの下半身が気になって話を聞くどころじゃない。
「……おい、颯人、聞いてんのか?」
「ちょっと、お尻が落ち着かなくて……」
「ぅおい!俺の話よりテメエのケツ優先させんな!」
「や、だってムズムズするんです……んんっ」
膝の上でもじもじしていたら、悠さんにがしっとお尻を掴まれた。
「そんなにやりたいなら、第二ラウンド、いくか?」
顔を上げたら、悠さんがにやりと笑った。
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