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ワガママ王子と悪戯猫(7)

快楽に溺れた頭で考える。考える端からすぐに気持ちよさに呑みこまれてしまうけど。 どうでもいいことですけど、これって第二ラウンドじゃないですよね。 第二ラウンドなんて昨日の夜早々に終わってますよね。 なんなら何ラウンドやったかも分からないくらいでしたよね。 今やってるこれは、もうリベンジマッチとか別試合ですよね。 俺にはリベンジする気なんて微塵もないんですけれども。 誰かタオル……タオル投げてください……。 「ま、待ってください……も、限界……です……んぅっ……ぁん」 悠さんの顔を見上げて俺は必死に訴える。 悦楽に全身を乗っ取られて、腕を持ち上げることすらままならない。 「気持ちい?喉が嗄れるまで喘ごうぜ」 顎を伝って流れる汗をぐいと手の甲で拭って、悠さんが無茶を言いながら、無遠慮に腰をぶちこむ。 「あ、はぁ、は、んあ、あぁぁあ!」 もう俺は、目を閉じたいくらいに体力が限界に近いのに、悠さんはまるで容赦してくれない。 何度目か分からない絶頂に呑みこまれて、のけ反って愉悦を叫ぶ。 このままだと、本当に声が嗄れそうだ。 また悠さんが荒々しく突き上げる。 「んっ、ぅ、やぁ、もう、らめ……」 悠さんの下でひくりと全身を震わせて、また意識を飛ばす。 「ふふ。颯人、まだイケるだろ」 無茶をいわないでください、悠さんにそう言い返したいけれど、そんな気力もない。 「ぐったりしてる颯人も、かわい。くたくた?」 上半身を起こした悠さんは俺の手首をとると、左右に揺らした。 俺は当然抗うほどの体力がないから、ぷらぷらと力なく手が揺れる。 「ふふ」 悠さんは子供のように無邪気な笑いをこぼすと、俺の手の甲と額にキスを落とした。 「いつもお澄まししてる颯人が、こんなにくたくたになるまで俺と遊んでくれるの、嬉しい」 「も、お、限界です、よ」 悠さんの顔を見上げて訴える。 悠さんはにっこりと幸せそうに見つめ返してくれた。 そんな悠さんを見たら……まだもうちょっと頑張れるかもなんて思ってしまう。俺も甘いな。 重い重い両腕を上げて、悠さんの頭を抱き寄せて、持てるすべての愛情を込めてキスをする。 「悠さんの笑顔、ずるいです」 「なんで?」 「そんな笑顔見せられたら、もっと悠さんを幸せにしたいって思っちゃうじゃないですか」 ……悠さんがそんなに全力で愛してくれたら、応えたくなっちゃうじゃないですか。 「もうな、俺、颯人が視界に入ってるだけで幸せだから、な?」 気が向いた時だけでもいいから、できるだけたくさん俺の隣にいてくれよ、なんて恥ずかしい台詞を、悠さんが幸せいっぱいの笑みと一緒に俺にくれる。 私が一番好きな居場所は、悠さんの隣なんですよ。 そんな言葉が口先まで出かかったけれど、照れくさくてどうしても言えなかった。 いつかきっと、照れずに言える日が来る。その日まで胸にしまっておこう。 そう思って、今は精一杯の笑顔で悠さんの言葉に、気持ちに応えた。 手を伸ばして、悠さんのミルクティー色のさらさらの髪を撫でる。 悠さんは満足そうに俺の隣に体を横たえた。 指を絡めて手をつないで、悠さんは甘えるように俺にすり寄る。 普段強気な発言ばかりしているけど、やっぱり甘えたいんだな、と悠さんが愛おしくなる。 暖かな空気の中、二人抱き合って……。 絶妙なタイミングで、昨晩と同じバイブ音が二人の間に割って入ってきた。 きりきりきり、と悠さんの右眉がつり上がる。 「んだよもう!」 聞きたくない、とばかりに悠さんは俺にしがみついて耳を塞ぐ。

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