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ワガママ王子と悪戯猫(9)
ぶーーっ。
ぶーーっ。
ぶーーっ。
「なあ颯人、昼飯何食いたい?なんでも作ってやるよ」
三度 鳴りだしたバイブ音を背中で無視して、悠さんがにっこりと訊いてくる。
「そういえば、悠さんて料理上手だったんですね。オムレツ作って見せてくれた時、びっくりしました」
「家事は一通りできるぜ。よーこー先生、生活力はゼロだったから、弟子入りしてここに住まわせてもらう代わりに俺が家事全般やってた。でも、そうだな、料理が一番得意かもな」
ぶーーっ。
ぶーーっ。
ぶーーっ。
「パスタにしよっか。ミートソースとカルボナーラとペペロンチーノ、どれがいい?」
「ミートソース食べたいです」
「任せろ。じゃあ、まだ昼飯まで時間あるし、もう一回……」
ぶーーっ。
ぶーーっ。
ぶーーっ。
俺は起き上がって悠さん越しに、震え続ける液晶画面を眺めた。
「悠さん、電話、『母』って表示出てますけど。お母さんからの電話、出なくていいんですか?」
悠さんは口をへの字に曲げた。
「どうせ創か幸が母さんの借りてかけてるんだろ。いいんだよ出なくて」
「え、もしかして昨日の夜からかかってきてたの、創くんと幸くんだったんですか?なんで出てあげないんですか。せっかくかけてきてくれてるのに」
「俺は、颯人と遊ぶのに忙しいの。それより優先順位が高い用事なんて無ぇんだよ」
「何馬鹿なこと言ってるんですか。さっさと電話に出てください」
「えー。どうせろくな用じゃないぜ」
「悠さんが刺された時、創くんも幸くんも、悠さんのこととても心配してましたよ。幸くんなんて悠さんが助かるって分かって涙してましたし。二人とも悠さんのことが大好きなんですよ。出てあげてください」
俺はベッドから降りると携帯電話を拾い上げて、悠さんに渡した。
悠さんは大げさにため息をつく。
「はあぁぁぁ。いいか、こいつらのために出てやるんじゃないからな。颯人が電話出てやれって言うから出るんだからな」
「どう違うのか分かりませんけど、分かりました。早く。切れちゃいますよ」
悠さんは拗ねた顔で携帯を受けとると、通話ボタンを押した。
「はい、何」
『ゆーうーー!!なんで電話出てくんないんだよ!』
俺にも聞こえるほどの大音量。
顔をしかめて悠さんは耳から携帯を離した。
「うっさい創。忙しいんだよ」
『今どこにいんの?』
「家」
『あのさぁ、今日から父さんと母さん旅行に行っちゃうんだよ!幸と俺悠んち行ってもいい?』
ほら見ろ、とでも言いたそうな顔で悠さんが俺を見た。
「やだ。だめ」
『行くから!十時に駅つくから迎えに来て!』
「人の話聞けよ。だめだっつの」
『もう向かってるから!絶対迎えに来てね!』
悠さんが何か文句を言おうとしたけれど、その前に電話がきれた。
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