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ワガママ王子と悪戯猫(11)

俺の家に一時寄ってもらい、着替えや寝間着(重要)など適当に見繕ってから、夕食の買い物をして、郊外の家に向かう。 「お鍋まで買う必要あったんですか?」 「だってうち、すき焼き鍋ねぇんだもん」 「まあそうでしょうけど……」 「一人だとなかなかすき焼きできないだろ?食いたい時はすき煮でごまかしてたんだけど、もう我慢しねぇ」 嬉しそうな悠さん。 後部座席では、買い物袋を抱えた創くんが中を覗いている。 「なんだよ創、なんか文句あんのか?」 悠さんがルームミラーを見た。 「春菊足んなくない?」 「そんだけあれば、四人分でちょうどいいだろ」 「ぅん……」 「まあまあ、不満は俺様の特製割下を味わってから言えよ。肉も良いヤツ買ったしな」 「肉!俺肉食べる!うまい肉!」 幸くんは肉食で、創くんは草食らしい。 「幸は片言で喋んな。阿呆がバレる」 幸くんは肉が楽しみなのか、悠さんがいることが嬉しいのか、どっちか分からないけれどご機嫌至極だ。 にっこにこの笑顔で悠さんに喧嘩を売っている。 「阿呆って言った人が阿呆なんですぅー!馬鹿も馬鹿って言った人が馬鹿なんですぅーっ!」 「ああ、久しぶりに腹立ってきた。幸、家着いたら一発殴るかんな。楽しみに待っとけ」 売り言葉に買い言葉。 悠さんがぎりっとハンドルを握る手に力を籠める。 しかし幸くんは怯むどころか余計に嬉しそうな顔をして、シート越しに悠さんに抱きつく。 「悠、怒っちゃやだよぅ」 「おい、シートベルトしてねぇのか。ちゃんと座ってろよ」 「今車停まってるもん」 「信号変わった。走るぞ、ちゃんとしとけ」 幸くんは渋々後部座席に腰を下してシートベルトをした。 しばらく走って家に着いて、俺と創くんは荷物を手分けして家に運んだ。 その間、悠さんと幸くんが何をしていたかと言うと、停めた車の回りで追いかけっこをしていた。 あはははと嬉しそうに笑いながら逃げる幸くんと、なかなか捕まらなくて真剣になってきた悠さん。 最終的に、幸くん自ら悠さんに抱き着いて追いかけっこは終わった。 「てめえ、この俺様を走らせやがって。罪は重いぞ、わかってんだろうな」 「あはっ!俺創だよ。幸はあっち」 俺と一緒に荷物を玄関に運んでいる創くん?を指して言う。 「ほざけ、トンチキが。俺様の耳をごまかせると思うな。声が全然ちげーんだよ!」 悠さんは迷いなく幸くんを捕まえると、ぺちんと額を叩いた。 「ぎゃっ」 幸くんが悲鳴を上げる。 「痛いよ悠ー!」 「だろうな。ぶったからな」 「痛いの飛んでけーって、して」 「はあ?なんで俺が治してやんなきゃなんないんだよ」 「してよぅ」 幸くんは悠さんにしがみついて離れようとしない。 「はいはい、痛いの痛いの飛んでけー」 悠さんが棒読みで、さっき自分で叩いた幸くんの額を撫でた。

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