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ワガママ王子と悪戯猫(15)
「あぁもう、越野さん越野さんうるせぇ。颯人さんと呼べ!」
え、まずそこ?
ていうか、そもそも『越野さん』と呼べって、創くん達と初めて会った時に悠さんが言いましたよね?
思わず俺は内心でツッコんだが、双子は特に何も思わなかったらしい。
「はぁい」
「うい」
二人とも素直に返事をした。
「それから、美人なのも綺麗なのも優しいのも、お前らより知ってんだよ!颯人は俺のなんだから、気安く触んな!」
これにはなぜか反発があった。
「えー。なんで?颯人さんは悠のマネージャーさんなだけでしょ?別に俺たちも仲良くしたっていいじゃん」
「だめ。やだ」
悠さんは二言で却下した。
双子がむくれる。
「そんなの、『しょっけんらんよー』じゃん!今日は悠も颯人さんもお休みでしょ?仕事で来てるわけじゃないでしょ?ねぇ颯人さん」
そう言われると、頷かざるを得ない。
「え、えぇ。仕事じゃないですね。プライベートです」
「ほらぁ!颯人さん、今日は悠のマネージャーじゃないんだよ!俺たちも仲良くして何がいけないの?」
追い詰められる悠さん。
ちょっと珍しいものが見れた。
「あー、えーっと、それはだな……あ、これもういいな」
鍋の蓋が開かれて、一時休戦する。
「肉!」
「春菊!ネギも!」
あっという間に鍋から肉と野菜が消えて、豆腐と白滝と椎茸が残った。地味。
満面の笑みを浮かべてぱくりと肉を頬張った幸くん。もぐもぐしているうちに怪訝そうな表情に変わっていく。
「ゆーうー?これ牛肉じゃない。豚じゃん!」
はん、と悠さんは鼻で笑った。
「当たり前だろ。そんなにほいほい大量に高級牛肉食わせるかっての。俺の財布だって底なしじゃねぇんだ。先に豚と白飯食って腹膨らましとけ」
普段お財布の心配なんてしない悠さんが、珍しいことを言う。
「悠さん、何か買い物の予定でもあるんですか?」
「ふふん。ちょっとなー。部屋の模様替えしようかと思ってさ」
あ、俺が越してくるからか。
悠さんは嬉しそうに笑っている。
その笑顔を見ていたら、俺もつられて口許が緩む。
あぁ、ダメだ。
緩みすぎてどうしようもなくて、俺はさりげなく片手で口許を覆い隠して横を向いた。
「颯人?」
悠さんが怪訝そうに顔を覗き込んでくる。
こっち見ないでください!
余計にやついちゃうから!
そんな俺たちを見ていた創くんが口を開いた。
「ねぇ、もしかして颯人さん、悠のこと好きなの?」
俺が悠さんに背を向けて顔を隠したのを見て、直球を投げてきた。
どう答えたものか迷っていると、悠さんがそっとテーブルの下で手を握ってくれた。
言っても良いってことだろうか。
「え、ぁ、う、……はい」
俺は横を向いたまま頷いた。
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