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ワガママ王子と悪戯猫(18)

密かにアラームが一時にバイブで鳴るように設定して、携帯を布団の中に抱き込む。これでもし眠ってしまっても大丈夫だろう。ちなみに今は十二時だ。 「おらお前ら、電気消すぞ。寝ろ」 悠さんの声と共に、ピッと小さな音がして電気が消えた。 壁際の間接照明だけがほのかに壁を照らしていて、リビングの床に布団敷いて男四人で雑魚寝していることを差し引いてもなんだかムーディな空間になった。 「いてっ。幸、こっち来るの早ぇ。戻れ戻れ」 「ん……」 幸くんはもう眠った上に、すでに寝返りをうって悠さんを襲ったらしい。 「ちょ、ちょっと幸、なんで腕に抱きつくんだよ、放せコラ」 悠さんが雑魚寝を満喫している叱り声が聞こえる。 ……ん、ん?え? 「颯人さん、もうちょっとこっち来て?」 耳元で囁き声がしたかと思うと、ぐいと抱き寄せられた。 「え?え、創くん?」 しっ、と創くんが俺の口を手で塞いで微かに笑う。 悠さんより少し小柄な、でも俺より太くがっしりとした腕と胸に閉じ込められた。 「ふふ、颯人さん髪の毛柔らかいね。猫っ毛?て言うの?触り心地良い」 ぴしっと創くんの向こう側の気配が凍り付いた。 「創、テメエ今なんつった?!颯人に手ぇ出したらどうなるか分かってんだろうな」 「えー、分かんない。けど手なんか出してないよ」 気配は悠さんに似てる。でも悠さんじゃない。 創くんは俺を抱きしめたまま、指先で髪を弄んでいる。 なんだか日の当たる縁側で大きな犬にじゃれつかれているようで、ちょっとほのぼのする。 ゴールデンレトリーバーみたいな犬。 「あぁクソ、幸が離れねぇ。颯人、大丈夫か?創に嫌がらせされてないか?」 「大丈夫ですー」 「黙れ創」 「あの、嫌がらせなんて、されてないです」 「じゃあ何されてんだ」 「えっと、ハグ?」 全然嫌ではないことを必死に伝えようとしたのだが、言葉の選び方を間違えてしまったようだ。 手榴弾を投げ込んでしまった。 「テメェ創こらこっち来い。何考えてんだド阿呆が」 「ふふ。兄嫁と親睦を深めてる」 「あ、によめって、お前……」 どういう意味か、悠さんは黙ってしまった。 こっちを睨んでいるような気はするが、黙っている。 しばらくして、創くんは耳元で「ありがと。これからも仲良くしてね」とごく小さく囁いて、元の位置に戻っていった。 歓迎してくれているみたいだ。知らず張りつめていた心のどこかが安堵で少し緩んだ。 時計を見た。十二時四十分。 十分ほどして隣から寝息が聞こえてきた。 創くんは寝てくれたらしい。 これでなんとか俺は一時集合に間に合いそうだ。

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