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ワガママ王子と悪戯猫(20)

十分くらい経っただろうか。 眠くなってきた。 座ってるのはふかふかのベッド。 毛布に包まりたい。だってそろそろ一時半だ。 大あくびをして涙があふれてくる。 涙を拭おうとした時、微かに微かに階段がきしむ音が聞こえた。 ようやく来てくれた。 はっと目も覚める。 間もなく部屋のドアがそっと開いた。 「こんばんは」 俺はベッドから降りて立ち上がり、両腕を拡げて悠さんを迎えた。 袖が長いせいで、指先すら見えないけど。 悠さんは一瞬目を丸くして――すぐにドアを閉めて歩み寄ると、俺を抱きしめた。 「颯人、これ着てくれたんだ。ありがと」 耳元で柔らかく呟く悠さん。 「似合ってますか?」 王子様の顔を見上げて尋ねると、俺の両の目に溜まった涙を指で拭ってから、笑顔が返ってきた。 「最高」 優しいキス。 「あとな、これ両脇スリットっぽくなってるから、ここ開けて欲しい。一番下だけ留めてさ。後で俺が外すけど。そしたら完璧」 その下に何もないことを知らない悠さんが、口許だけ笑った企み顔で示す。 スリット結構深いな!腰まである。大丈夫かな。 両脇を止めていたボタンを悠さんが外すと、すぅっと風通しが良くなった。 なのに、涼しいはずなのにじわじわ熱い。顔が、体が、ソレが、ソコが、熱い。 予想外の露出。 布一枚あるとは言え、無防備にさらされていることが心もとなくて、でも心が妙なリズムを刻む。 ボタン外しただけでどうしたってんだ、俺。 俺がしたいのは何だったっけ? ただ、悠さんと楽しいことをしたいだけだった。ちょっとした悪戯のはずだった。 それが、いざ始めたらこのざまだ。まるで欲望に翻弄されてしまう。 体が熱にうかされたように熱い。 ボタンを外し終えた悠さんがとうとう気づいた。 「あ、れ、颯人、もしかして……下、穿いてない?」 俺は赤くなってうつむき加減でそれに答えた。 「だって……悠さんが、下はない方が良いって、昨日……」 突然なキス。そして抱擁。 「ちらっと言っただけじゃん。あれ覚えててくれたんだ」 悠さんは唇へのキスだけでは飽き足らなくなって、頬、鼻先から、身を屈めて首筋、鎖骨を温めていく。 「ふふっ、あぁどうしよう、嬉しくて叫びてえ。今すぐ誰かに自慢してえ。こんなに可愛くて悪戯好きの颯人が俺の婚約者なんだって。俺のこと好きでいてくれるんだって。なぁ颯人、これは言ったことあったっけ?」 言いながら、俺の脇腹に添えた手のひらを、ゆっくりと下に滑らせて、太もも半ばまでを撫でた。 「俺な、颯人のここのラインがさ、最高に好き。男っぽくも、女っぽくもないんだけど、堪んなく綺麗な曲線なんだぜ。いくら見てても飽きない」 体の側面のそのラインを悠さんの手がゆっくりと往復する。 その繰り返しを意識が追うごとに、体が熱を溜めていく。 鼓動が速くなっていく。 「ぇ、あの、ゆうさ、……悠さん……」 俺は崩れ落ちるようにその場に座り込んだ。 「どうした颯人」 悠さんが俺の前に跪いて、それで、上向いた俺の顔を両手で掬い上げる。 悠さんの手も熱い。 俺の両脚は笑えるくらいに震えててガクガクで、使い物にならない。 ベッドにもたれかかって、はしたなくも、М字に大きく足を開く。 大きな手に俺の手を添えて、下へ。 勃ってるからもう大体見えてしまってるけど、あえて悠さんの手で裾をまくって(あらわ)にする。 たらたらたらたら飢えた獣みたいに涎を垂らして、みっともない。 ぱくぱくぱくぱく物欲しそうに口を開いて、恥ずかしい。 でも隠すものが何もないそこを見て、悠さんはその眺めにごくりと喉を鳴らした。 「悠」 狂おしいほど愛しいその名を呼んだ。 名だけを呼んだ。 ブラックオニキスの昏い瞳を見上げて、その手に舌を這わせた。 甘くて美味しい金平糖を齧るみたいに薬指の第一関節に優しく歯をたてる。 「恥ずかしいけど……熱いんだ。悠、ちょうだい?」

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