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第17話 Side:F *

 服をたくしあげて、浮いたしなやかな曲線を撫でるとミューは擽ったそうに身を捩った。ここ二日ほど何も食べていなかったからか、その線はまた細くなったようだった。浮いた腹斜筋をなぞりながら、下着に手を入れる。舌と舌を絡めて、溢れた唾液が口の端から溢れていくのも気にせず、ミューはもっともっとと言うように僕の腕を掴んだ。こんなに求めてくるとは思っていなくて、僕の方が身を引きそうになる。ミューの求め方は必死で早急なものだった。僕が逃げる訳にはいかない。ミューは恐らく、今自分の記憶と戦っている。僕で記憶の上書きが出来るなら、それを助けたい。 「っ、……ん、ふ、ぅっ」  下肢を伝い、手のひら全体で睾丸を包みこむと微かな吐息が頬を撫でた。それでもそのまま口づけを深くして溢れる唾液でクチクチと音を立てて、時折り舌を吸い上げたりして長い口づけを楽しむ。その間も下着の中の手を動かして、まだ芯のなかったそれに快感を与えるために少しずつ確かな刺激を与え出す。適度に力を籠めながら上下に動かして、固さを持たせていく。口づけから漏れ出す吐息の量は少しずつ多くなっていった。それなりの固さを持たせた後、手を一度下着から抜いて服を脱がせていく。それからやっと口を離す。 「んっ、……ぅむ、む、んッ……」  ミューの口が閉じる前に、口内に指を差し込んで溢れ返った唾液を掬いとり指を濡らす。飲み込みきれなかった唾液が垂れてすでに口の端を濡らしきっていた。これだけ唾液で濡らせば大丈夫だろう。指を口から抜いて、ミューの足を曲げて膝を立てさせ、横に開く。それから膝を押して腰をあげさせて、尻が上を向くようにする。ミューでは支えられない腰を僕が支えるため体を寄せる。いわゆるちんぐり返しとかいう体勢。さすがに恥ずかしかったか、赤くなったミューがこちらを見上げているのが見える。その顔が少し可愛かったから、つい菊門に舌を這わしてみると「ふぃん」と少し嫌がる声が聞こえたから仕方なく舌は引っ込める。代わりに唾液で濡らした指を添えて挿れていく。自分で上手く体勢を支えられないていないから、僕にほとんど下半身の体重がかかっている。少し重いがせめて慣らすまではこうしていよう。 「っ、ぅ、あッ……ぁ、ん……」  まず中指を垂直に入れて、その指をナカで少し動かしてみる。羞恥も合間って敏感になっているのか、指を少し抜き差しするだけでミューは小さな声を漏らした。それに応えるように、指の本数を増やして入り口を広げるために指の付け根を左右に動かすと卑猥な音が漏れた。 「ん、んっ、ぁッ……ぅ、」  そうすると菊門がヒクヒク動く。その反応もしっかり見られることが恥ずかしいのか、ミューがついに手を伸ばしてきて後孔を弄る手に触れた。足の間からミューを見下ろすとミューは真っ赤な顔で首を左右に振っていた。今さら恥ずかしがることもないだろうに。 「いや?」 「ぁ、う……ぁ、んま……見るなよ……」 「えー?」  三本目の指を入れて、わざと音が立つように弄るとミューは片手で顔を覆ってしまう。その隙にしっかり芯を持って勃ち上がった前に手を這わしてみると、すでにそこは愛液で濡れていた。それを指に絡めて、上下に扱いてみるとまた卑猥な音が増え耳を犯していく。 「僕はミューの全部が見たいなぁ」 「ん、っく……ぁ、んッ、ん、ひぅッ!」  遊んでいた指を奥まで差し入れて精巣の裏をグッと押すと、ピクと体を震えさせた。伸ばされた手が落ちていく。それは顔の横のシーツを掴んで、頭を転がし隠れるように丸くなる。奥まで入れた指を開くと後孔が広がっていく。冷たい空気を感じるのか、ミューは睨むような視線をこちらに向けて「やめろ」と訴えてきた。耳まで真っ赤にして、水の溜まった目を向けられても止める気には到底なれないのだけど。 「ひっ……は、ァッ、あっ! や……ぅ、あ、あッ、」  そこに息を吹き込んでから指を閉じて、動きを再開させる。同時に前を愛撫する方も動かして前後から刺激を与える。触れたところから濡れた音が溢れていく。クチュクチュという生々しい音が堪らない。もう挿れたいなぁと思う気持ちを堪えて、ミューが自分で欲しいと言うのを待ってみる。 「ふ、ぅ、ァっ……、あッ、ま、て……イ、っちゃ……」 「え?」 「ん、あッ! あ、イっ……──ッあ゛っ!」  弄っていた前の方がびくと脈打つのを感じて、咄嗟に先端を少し持ち上げる。と、飛び出した白濁は腹を飛び越えて胸元にかかる。 「あ、惜しい」 「っ……おしくない……バカ……」  どうせなら顔にかけたかった。それには少し勢いが足りなかったらしい。もう少し溜まった状態で、我慢を重ねた上でやったら届くかもしれない。そんな期待をする僕に対してミューは悪態をついてくる。挿れてと言ったらイく前に挿れたのに。そんなに一回イきたかったのだろうか。  ミューはゆっくりと息を吐き出しながら、横目に僕を見上げてくる。その目はその先を求めるものだった。しかし今はまだツラいだろう。 「落ち着くの待つ?」 「……いい、から。今、落ち着いたんだよ。やっとお前が見えたから。今、シて」 「……そう、ならシてあげる」  自分の体を離して、あげていた腰を下ろす。ミューの望みは最初から忘れることだった。頭にこびりついた凌辱の記憶との戦い。塗り替えてくれという願いに、応えない理由はなかった。ミューがどれだけの地獄にいたか、僕では分からない。でも簡単には消えない記憶を植え付けられたというのは嫌でも分かる。きっと忘れることは出来ない。

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