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第53話

「理苑は?」 「俺ドジって足と腕動かない」 思ったより弱々しい声になってしまった… 俺な、お前に出会えて良かったよ…楽しかった。好きになれて本当に良かった…そんな泣きそうな顔も困った顔も大好きだった… ねぇ。琉…幸せになれ…いつも笑っていてくれ… 琉は立ち止まる…だめだ…ここにいたらお前も危険だ…それなのに…動かない…だめだ…早く… 「行け!二人が弱ってる!!早く行け!」 きっと自分のことでなく二人のことを言えば急いでここから離れてくれる確信があったから叫んだ。 初めて琉に怒声をあびせたかもしんない。俺の声に弾かれるように身を翻し走り出す琉… 「理苑!すぐ戻るから死ぬなよ」 俺のことまで心配して…お前は少しは自分のことも心配しろよな…背中を見送ったその刹那… ガラガラガシャーン!! とさっきよりも大きな音がして部屋が崩れ落ちた。 「はぁ…もう…ついてねぇな…いや?ついてんのか?さっき俺に倒れ込んできた家具のおかげでなんか空間は保たれてる。俺すげー…はははっ…」 一人で呟く。そうしないと全部なくしてしまいそうだったから その時賢也さんに言われた言葉を思い出してた。 「人生何が起こるかわからない。琉くんと理苑がこれからどうなるのかもね。これからの人生はずっとずっと長い。もしかするとお前の運命の相手がこれから現れるかもしれない。きついことや辛いことも多いかもしれない。逃げ出したくなったりすることももう全部やめたいって思うこともね。けどな、これだけは忘れないで。後悔しない生き方をして」 後悔しない生き方?そんなのまだできてないし。ここで死んだら後悔する。それはわかるよ。 まだ運命の相手ってのにも出会ってないしやりたかったバスケだって道半ばだし きついことってこれ?苦しいことってこれ? もしかして今このときなのかな?

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