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第81話
だが、いくら待っても痛みはやってこない。恐る恐る目を開けると唇から血をにじませた天が肩を震わせていた
「…ただただ不快だ!理苑の母親?そんなの失格だ!!理苑は絶対にそんな言い方はしない!!誰より人を思い行動できる人だ!とても強い人だ!みんなのヒーローだ!お前が母親の責務を放棄してくれて本当良かったと思うよ!だからこそ理苑はこんなにも素晴らしい人になった!!理苑の母親は間違いなく漣さんだ!!!」
俺のためにこんなにも怒ってくれる…俺を必死で守ってくれる…そんな天に言葉も出ず静かに涙した
その時だった…
「確保だ!!」
黒い服を着た男たちが現れて女を拘束した。
「遅くなってすまなかった…」
「藍さん。そんなこといいから早く。連れて行って。不快だ」
「なんなのよ!!あなた何者なのよ!!」
「お前に答える義理はない。汚い口を閉じろ。このクソババア」
引きずるように連れて行かれた女を見送る。
「はっ…!理苑…ごめん…君を産んでくれた人に…俺…あんな酷いこと…」
唇を噛み締め自分が泣きそうになりながら俺に謝罪する姿がとても痛々しかった
「いや。ありがとう。すげーすっきりした」
困ったように寂しそうに笑う天を見てると抱き締めたくなってぎゅっと抱き締めた
「理苑…」
「天。すっげぇかっこよかった。ありがとう…俺の言いたいこと言ってくれてありがとう…ごめんね…顔…痛かったよね?」
「ああ。このくらい平気。少し趣味の悪いリングが当たっただけだし」
天を離し唇の血を指で拭う。
「ちょ…汚い…汚れちゃうよ…理苑の大切な手が。こんなの掠り傷だよ。大丈夫」
「汚くねぇよ」
無意識に天の唇を奪っていた
「っ!!!」
「あ!!ごめん…」
真っ赤な顔がすごく可愛く見えた。琉によく似てるけど全く違う天。
あぁ…そっか…俺…
突如現れた天に直ぐに囚われたんだ
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