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うっすらとではあるが、血と精に塗れて息絶えた女の亡骸がいくつも確認できる。 そのどれもが衣服を剥がれ、肌を曝した状態で捨て置かれているではないか。 押し返そうとしたのだろう。膝を折り曲げた状態で捨て置かれている女を見て、遠雷はただ黙って首を横に振った。 「色狂いの俺が言うのもなんだが・・これは酷い。股掌(こしょう)の上に玩ぶ(もてあそ)なんざ、品が無さすぎる。満足したならせめて刺してから服は戻してやれよ・・・ったく」 ぶつくさと呟きながら、女の側に寄れば土と精に塗れた唇が薄ぼんやりと見えてくる。 頬に視線を向ければ、流したであろう涙の痕がクッキリと残されていた。 「・・・・・最期がこれでは・・やりきれんな」 そう呟いて開いた女の襟に手を伸ばしかけた遠雷であったが、ふと何かを思い出すように空を見上げながら、露になったままの女の乳房に手を伸ばした。 彼は何かを確認するように女の乳房を数度揉み、次いで全身を撫でるように肌を摩ると「ああ」と呟いた。 女の腹に残されたままの刺し傷を探り当て、傷口を何度もなぞってはフムと頷いて襟を戻している。 「・・・・・・・」 そうして彼は、女の亡骸を見つける度に腰を降ろし、腿や乳房を揉んだ後、傷を探してなぞるという行為を何度も繰り返していたのだが、やがて何かを考えるように顎に手を置くと再度、フムと頷いて前を見た。 「血の渇きと肌の硬さからして・・襲われたのは昨夜から明け方にかけて・・?」 倒れている女の数からして、複数人で襲い掛かったのは間違いない。ざっと数えても七名以上の女を片っ端から襲うのだ。一人や二人で襲うにしては異常ともいえる数である。 『まぁ・・夜盗でもここまではしないだろうが・・』 そんな事を考えながら、遠雷はほぼ無意識の状態で土を靴で擦っている。擦った後に軽く踏むという動作を何度も繰り返しながら、足跡の出来を確かめていた。 『湿り気を帯びたこの土は足跡が残りやすい。複数でこの人数の命を奪ったのだから、俺達の他にも足跡くらいは残っていそうなものだが・・?』 それに、遠雷にはもう一つ、引っかかっていることがあった。 息絶えている者達に刻まれたあの刺し傷である。 迷いなく一直線に二度突いて鞘に戻している。 「これは何という技だったか・・?」 ううむと腕を組んで考えてみるも、どうにも思い出せない。喉の奥まで引っかかっているのだが、取り出すのはまだまだ先のようである。 「・・・家族は五名・・。襲われたのは倍か・・・」 この小屋の先にも道はあるだろうから、他に村や家があってもおかしくはない。 「それにしても・・」 薬を売る商いをしていた小さな小屋の前での惨劇がどうにも引っかかる。 それに、今まで疑問すら持たなかったが、この地に倒れている亡骸は殆どが人間で、獣人や異形との混血は含まれていない。獣人が多く住む国なのだから、本来は逆である。 『耳を落した?いや、頭髪は綺麗で耳もそのまま残されていた。まさか襲った凶漢は・・』 そうまで考えて、遠雷はブンブンと首を左右に振った。 「いやいや。これだと決めつける事はしてはいけない」 そうまで考えて、遠雷はようやく離れた場所にいる昂遠の事を思い出した。

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