3 / 30
いじっぱりにキス 第2話(佐々木)
「雪ちゃぁ~ん、どうしたぁ~?夏樹に泣かされたのかぁ~?」
「夏樹さんいないのぉ~……ひっく……俺嫌われちゃったのかなぁ~……?」
「よしっ!俺が夏樹をぶん殴ってやるっ!!雪ちゃんを泣かせるなんて悪いやつだっ!!」
「夏樹さん悪くないもん!!悪いのは俺だもん!!ふぇ~んっ!!」
「夏樹はどこだぁ~!!」
「やめんかっ!このばかっ!!」
佐々木は、雪夜を泣き止ませるどころか余計に泣かせてしまった相川の頭を、丸めた雑誌で思いきり叩いた。
「痛っ!ちょっとぉ~!なに?俺が何したのさぁ~」
「お前はもういいから黙れっ!!雪夜に触るなっ!」
「みどりちゃんが怖いぃ~……ふごっ」
「……お前は後で俺の手であの世に送ってやる。大人しく待ってろっ!!」
相川の口にビーフジャーキーを大量に突っ込んで黙らせると、雪夜の前に座った。
「雪夜、あのな、夏樹さんはお前のこと嫌ってなんかないぞ」
「でも、俺のこと置いていったぁ~」
「それは、仕事だから……あ~……まぁ、夏樹さんだって好きでお前を置いていったわけじゃないし……」
俺慰めるの下手かよっ!!!
普段もよく雪夜の愚痴を聞いてやって慰めているが、雪夜が不安定になっている時にはどう対処すればいいのかわからない……
夏樹さん曰 く、不安定になっている時は思考が飛びまくってるから不用意に返事をしない方がいいらしいし……っていうか、不安定なのか酔ってるだけなのかもわからん状態だし……これどっちなんだ?
「……わかってる……お仕事だから仕方ないのはわかってるの……でも夏樹さんがいないのが淋しいぃ~!!」
雪夜が自分から不安や不満を口にするのは珍しい。
これは……やっぱり両方か?不安定になってるかどうかは別として、だいぶ酔ってるな……
「……ぅん、そうだな。淋しいよな」
「言ったら困らせるだけだってわかってるからぁ~……俺、夏樹さんの前では我慢してたのぉ~……!」
うん、さっき本人に言っちゃってたけどな。
今頃、たぶん夏樹さんも泣いてると思うぞ?
恐らくホテルで一人枕を抱えて泣いているであろう夏樹を想像してちょっと苦笑する。
「よく頑張ったな。雪夜はえらいよ。よしよし」
雪夜を抱き寄せて、頭をよしよしと撫でる。
これは、泣き止ませるためであって、別に他意はないからな!?
嫉妬深い夏樹に心の中で言い訳をしていると、雪夜が佐々木の背中に手を回して控えめにギュっと抱きついてきた。
普段は、ノリで少し抱きつくフリをすることはあっても、雪夜からこんな風に抱きついてくることはない。
そこら辺はやっぱり、雪夜なりに一線を引いているのだろうなと思う。
う~ん、たしかにこれは可愛いよな~……雪夜、ちっこいし……
でも、エロい気分になるというよりは、庇護欲 を掻き立てられるんだよな~……
俺男だけど雪夜に対してはなんだか母性に目覚めそう……いや、もう目覚めてるか。
しょっちゅう雪夜に「ママ」って呼ばれてるし……
佐々木がそんなことを考えながら雪夜を抱きしめて背中を撫でていると、いつの間にか雪夜は眠っていた――……
***
ともだちにシェアしよう!