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いじっぱりにキス 第5話(佐々木)

 そんなわけだから、相川が雪夜に構っていても別に何とも思わないが……  ついでのようにこっちにちょっかいを出してくるのは……ムカつくっ!!  佐々木に気づかれないようにソロリと近づいてきた相川を足でゲシゲシと蹴る。  見てなくても長年の付き合いから、相川の行動くらいは読めるのだ。 「痛てて……こらっ!……あ~もぅ、(あきら)っ!悪かったって!!こっち向けよ!」  雪夜に抱きついていた腕を引きはがされて、相川の方に引っ張られた。 「ぅわっ!?んっ……ふっ、やめっ……ぁ……っっっ!!」  相川に顎を捕まれ、無理やり舌をねじ込まれる。  佐々木もモテるのでそれなりに経験はあるが、女の子相手にこんなに激しいキスをすることはないので、息継ぎのタイミングがわからなくなる。  その上、酒の匂いと酸欠で頭がクラクラする……  ちょっ……長いっ……苦しっ…… 「ん~~~~っっっ!!!!」  息ができなくて相川の胸をどんどんと叩くと、ようやく口唇が離れた。 「はぁっ……はぁっ……おまっ……ゲホッ」  相川の唾液で濡れた口唇を手の甲で拭いながら睨みつける。 「翠は相変わらずキスが下手だなぁ~」  相川が余裕の顔でペロリと口唇を舐めた。  この野郎ぉ~~~!!!! *** 「え~と……あの~……二人って……もしかしてそういう関係だったの?」  横から聞こえてきた声にハッと顔を見合わせて、一斉にベッドの上の雪夜を見た。  完全に雪夜のこと忘れてたぁあああああああああ!!!!! 「いや、あの、これはっ!!」 「な~んだ……だからか~!」  必死に言い訳をしようとする佐々木に、雪夜がにっこりと笑いかけた。 「俺ずっと、二人ともモテるのになんでちゃんと彼女作らないのかな~って不思議だったんだよね~。前はいたっぽいけど、最近全然特定の相手作ってなかったでしょ?でも、夏樹さんが言ってたのもこういう事だったんだね~」 「は?夏樹さんが何だって!?」 「いや、俺がなんで二人が特定の相手を作らないのかな~って話をしたときに、夏樹さんが、『あの二人はたぶん――……』ってなんか意味深に言ってたんだよね~」  怖っ!!!あの人知ってたのかっ!?  いやいや、でも別に…… 「俺全然気づかなかった……でも、そうだよね、俺と夏樹さんのこと聞いても二人とも全然動揺しなかったのは、そういうことかぁ~……」  雪夜がようやく合点がいったという顔でうんうんと頷く。  たしかに、俺は何となく気づいてたから、雪夜の相手が男だって知ってもそんなに驚かなかったけど……それよりも…… 「いや、俺ら付き合ってないからな!?」  これだけは、はっきりと言っておかなければっ!!  勘違いされたままでは困る! 「え!?そうなの!?」 「え!?そうだったの!?」  雪夜と相川の声がハモった。 「なんで相川まで一緒に驚いてんだよっ!」 「だって、俺らって付き合ってるんじゃねぇの?」  相川が困惑した顔で佐々木を見る。  え、何言ってんのこいつ…… 「キ、キスしたことはあるけど、付き合うとかそんな話になったことねぇだろうがっ!!」 「……俺普通に付き合ってるつもりだったけど……?っていうか、俺たちキス以上のこともしてるだろ?」 「は!?だってお前……こんなのただの酔った勢いで……って、え……?」  キス以上のことって……お前もしかして……あのこと覚えて……? 「あのさぁ、酔った勢いだけでそんな何回もキスするかよ。っていうか、酔った勢いで友達襲うとか俺どんだけ節操ナシだと思われてんの?」  相川が眉間に皺を寄せて、心外だとばかりにため息を吐く。  だって、お前酔っぱらったら結構誰にでも……  いや、絡むのは絡んでも、キスしたり抱きついたりは雪夜か俺にしかしない……か?―― ***

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