7 / 30

いじっぱりにキス 第6話(佐々木)

「つ~ま~り~、相川は佐々木のことが好きってことでいいよねぇ~?」  雪夜がキラキラした瞳で二人を交互に見る。  こら雪夜、そんな目で見るんじゃありません!! 「そう、好きだよ。雪ちゃんのことも好きだけどね」 「俺も相川好き~。佐々木も好き~。二人とも大好きぃ~!でも~、相川は佐々木のことは~……友達以上の好き~?」 「うん、友達以上の好き~」  雪夜と相川が付き合いたてのバカップル並みに好きを連呼している。ただ、その中身は……  ちょっと待てっ!!友達以上の好きって…… 「だって、お前が好きなのは……雪夜だろ?」  佐々木だけが話についていけなくて、茫然と呟いた。  相川が雪夜のことを友達以上に好きなのは、見ていればわかる。  でも、今の会話だと……友達以上の好きって……雪夜じゃなくて俺!? 「だから、雪ちゃんのことはたしかに好きだけど、そういう意味で付き合いたいと思うのはお前だよ。そうじゃなきゃ長年の関係を壊してまで抱くかよ……俺だってそれなりに覚悟して抱いたんですけど!?ホントに俺の気持ち伝わってなかったの!?」  相川が頭をガシガシと掻きまわしながら、しょうがないやつという目で佐々木を見る。 「そんなの……わかるわけないだろっ……お前いっつもふざけて……あの時だって……」 「あ~悪かったって……あの時は半分酔ってたからさぁ……でもちゃんと覚えてたし……だいたい翠が可愛いことしてくるから……」 「お前……覚えてたのかよ……あの時のこと……」 「当たり前だろ?お前の顔も声も言葉も身体も全部覚えてるけど?」 「わぁーわぁーっっっ!!!嘘だぁあああああああああ!!!!」  佐々木は耳を塞いで叫んだ。  あの時のこと全部覚えてるだって!?だって……だってお前……お前は…… 「嘘じゃねぇよ。さすがに翌日はちょっと照れたから部分的に覚えてないフリしちゃったけど……でもその後ちゃんと付き合おうって言っただろ?」 「はっ!?そんなこと言ってないっ!!」 「言ったっ!俺は絶対言ったっ!」 「そんなの……だって……聞いたら絶対覚えてるっ!!!」 「俺が『俺たち付き合おうか』って言ったらお前『うん』って言ったしっ!?」 「へ……?」  そんなこと言ったか?だってあの時……  お前が酔ってて覚えてなかったから俺……このまま夢だったってことにすればいいやって……ごまかすことを考えてて……  俺……テンパってたから適当に返事したのかっ!? 「はぁ……もぅいいよ。わかった、覚えてないなら仕方ない」  相川が呆れた顔で佐々木を見る。 「あ……」 「じゃあ、もう一回言うから、今度はちゃんと覚えておけよ?」 「え?」 「翠、好きだ。付き合おう。これからは友達としてじゃなくて、恋人として!」  相川がキリッとキメ顔で言ってくる。  だから、キリッじゃねぇんだよっ!お前、絶対ふざけてるだろっ!  ちょっと一旦冷静になろう…… 「ちょっと待て……いや、だから、なんでそんな話になるんだよ。相川は俺のことなんかなんとも思ってなかっただろ?」 「ん~……まぁ、お前のことはずっと親友だと思ってたからな。でも……抱けたってことは、やっぱり俺もそういう対象で見てたってことじゃね?お前で勃つし……それに、あれから結構お前のこと意識しちゃってるし。なんか……他の奴と話してるとことか見たら……ちょっと妬けるし……」  ……勘違いするな……こいつはきっとバカだから…… 「そんなの……ただ流されてるだけだバカ……好きって言われたらその子のこと気になって自分も好きかもって錯覚するのと同じだ……」  ……お前の好きと俺の好きは違う…… 「いや、それは違うよ?俺はお前じゃなきゃだめ。無理。だって、俺、他のやつで勃起しねぇもん!」 「……は?」 「あ゛……っ!!あ~もぅ!!これは言いたくなかったのにっ!!」  相川がしまったという顔をして天井を見た――…… ***

ともだちにシェアしよう!