10 / 30

いじっぱりにキス 第9話(佐々木)

「雪夜、ホントにもう帰るのか?まだ朝早いし……夏樹さんが迎えに来てからでもいいんじゃないか?」  佐々木は、朝陽の眩しさに目を細めながら、雪夜を見た。 「ん~でも、夏樹さん今日の夕方には帰って来るって言ってたし、今から帰ったら内緒で用意できるかなって……それに、佐々木も相川とちゃんと話した方がいいよ」  雪夜が部屋の中をチラッと見る。 「いや、だから俺たちのことは気にしなくてもいいから……」  雪夜は昨夜かなり酔っていたはずなのに、なぜか俺たちが揉めていたということだけは覚えているらしい…… 「佐々木、俺鈍いから今まで気にしてなかったけどね、でも、相川は佐々木のことちゃんと好きだよ。だって、思い出してみたらね、佐々木が他のやつと話してる時とか、相川めっちゃイライラしてたし……あれたぶん嫉妬してたんだと思う。それにね、相川が佐々木のこと見る時ね――」 「えっ!?ちょ、それってどういう……」 「じゃあ、泊めてくれてありがとね~」 「雪夜ぁああ!?」  夏樹が出張から帰って来る日の朝、雪夜は可愛い笑顔でサラッと俺の心をかき乱す言葉を残して朝陽に溶けていった。 *** 「雪ちゃん帰っちゃったの?」 「なんだ、起きてたなら出てくればよかったのに……」  部屋に戻ると、まだ寝ていると思っていた相川がベランダに出て煙草を吸っていた。 「ん~……なんか二人で話し込んでたから、お邪魔かな~っと思って?」 「聞いてたのかよっ!?」 「いや、内容までは聞こえなかったけど……なに?何の話だったの?」 「なんでもないっ!!」 「ふ~ん……」  ふ~っと細い煙を空に吐き出すと、煙草の火を消して入って来た。 「さてと、じゃあ、続きするか」 「は?続き!?」 「続き。だって昨日は途中までで我慢したし!!」  いやいや、なに言ってんだこいつ…… 「雪夜がいたんだから当たり前だろっ!?途中までだって……あんな時に普通しねぇよバカっ!」  眠っている雪夜の横でイかされたことを思い出して、相川にクッションを投げつける。  あの後、まだ続けようとした相川に思いっきり頭突きをして、これ以上するなら一生口きかないとまで言ってようやく相川の動きを封じた。  お触り禁止にして、相川は床の上に転がし、佐々木は雪夜とベッドで眠った。 *** 「だから~もう雪ちゃん帰ったんだし、続きしようぜ」  そう来るのか……確かにもう雪夜はいないけど……  つーか、何となくこうなる予感があったから、雪夜にはまだいて欲しかったのに……っ!  それにしても軽い……軽すぎる!!仮にも長年幼馴染だった相手を、しかも同性を抱くってのに、なんでそんな軽いんだよお前はっ!! 「あ~き~ら?」 「だぁ~もぅ!!うるさいっ!やりゃぁいいんだろっ!やりゃぁっ!!」  雪夜……お前にはいつも偉そうにアドバイスしてるけどな……ごめん、俺も結構恋愛下手だったみたい……  特に、こいつに関しては……冷静な対応ができない……  いや、この状況は恋愛っていうのとは違うか…… 「なにヤケになってんだよ。ほら、来いって」  ベッドに寝転んだ相川が、自分の隣をポンポンと叩く。  お前……誘い方が雑っ!!!  呆れて頭をガシガシと掻きまわすと、ため息を吐いた。 「シャワー浴びてくるからちょっと待て!」 「え?そんなん後でいいって」 「俺がよくねぇんだよっ!!いろいろ準備があんのっ!いいから、大人しく待ってろっ!」  はぁ……こんなよくわからん状態で好きな奴に抱かれるために自分で準備してるとか……  俺ホント何やってんだ……バカみてぇ……  っていうか、あいつホントに俺のこと抱けるのか?  本人はヤる気満々だけど……俺男だぞ?  前にヤった時は……あいつ酔ってたし……絶対勢いでヤっただけだし……  不安しかない中、とりあえず準備を済ませた。 ***   「お、ようやく出て来た」 「お前……タバコ吸い過ぎ……」  部屋に戻ると、相川はまた煙草を吸っていた。  雪夜は煙草が苦手なので、雪夜のいる前では相川も禁煙している。  だから、普段もそんなに吸っていなかったはずだけど…… 「ん~?……EDになってからいろいろストレス溜まってさ~……」  それは……つまり欲求不満ってことか…… 「翠が発散させてくれるなら、禁煙するけど?」 「なんで俺……ってちょっ……ぅわっ……!」  相川に引っ張られてバランスを崩した佐々木は、そのままベッドに倒れこんだ。  ほら、結局は欲求不満だから発散したいってだけだろ?  別に、手〇キでも擦りあいでも……抜く手伝いくらいならしてやるけど……  あれ?……無理に俺を抱く必要なくね?――……   ***

ともだちにシェアしよう!