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いじっぱりにキス 第11話(佐々木)

 ……抱かれるのはあの夜限りのはずだった……  そもそも、抱かれるはずじゃなかった。  酔って寝ていると思ったので、何となく今まで溜め込んでいた想いを吐き出したくなって、ひとり言のつもりで告白した。  まさかお前が起きてたなんて……しかもそのままお前に襲われるなんて……予想外だったんだよ!!  でも、本当は少し喜んでいる自分もいた。  こんなチャンス二度とない。  一度だけ……今なら……酔っ払ってるからきっと夢だってごまかせる……    一度だけでよかったんだ。  俺は、後は今までと同じように……親友として傍にいられればいいと思っていた。  ずっと一緒にいられるはずのポジション。  他の誰かに心変わりをしたら消えてしまうような曖昧な関係じゃなくて、ずっと一緒にいられる関係だ。  それなのに……  親友でも恋人でもない、あやふやなこの状況は結構キツイかもしれない……  いっそ、セフレになろうって言ってくれよっ!!  その方がまだ……親友に戻れる可能性があるだろう?    目の前が霞んできたので、両手で相川の顔を引きはがし、自分の顔を両手で隠した。 「(あきら)はホントに困ったちゃんだなぁ~。お前って昔から、素直じゃないよな」  腕が疲れて来たのか、飽きたのか、相川が佐々木の隣に寝転んだ。  横向きになって、肘をついて頭を支え佐々木を覗き込む。 「うるせぇ……どうせ俺は……」  相川の顔を押しのけると、ゴロンと転がり相川に背を向けた。  素直じゃなくて悪かったなぁ! 「誰にでも優しくて優秀で先生ウケも良くてスポーツもできて完璧。それなのに、俺にだけは口が悪くて、意地悪で、すぐに不貞腐れるし、素直じゃないし……ほんっと可愛くない」  可愛くない?……いや、可愛く思って欲しいわけじゃないけど……  なんだよ……じゃあなんでお前はそんな可愛くない俺を抱くとか言うわけ?  結局、からかってるだけ…… 「でも俺しか知らないお前のそういうところが、特別でちょっと嬉しかったんだよな~」  相川が、佐々木の髪を弄りながら、ポツリと呟く。 「……え?」 「だって、お前って完璧すぎて人形とかロボットみたいだったから、何か違和感があったんだよ。でも、俺の前でだけはお前はちゃんと人間らしい反応したから……お前が俺にだけは心を許してくれてるのかな~って思って……それがちょっと嬉しかった。みんなの前で見せる作り物みたいな笑顔より、俺の前で見せるしかめっ面の方がよっぽど生き生きしてたからな」  相川の指が、佐々木の首筋から肩のラインをスッと撫でる。 「……っ……」  それは……だって俺のそういうところを見てもお前は……かわらなかったから……  だから……俺は…… 「俺さ、女の子好きだよ。女の子は小さくて柔らかくていい匂いするし、可愛いな~って思うし、守ってあげたいなって思うし、裸見たら興奮するし?」  え、こいつ急に何言い出してんの?  お前が女の子好きなのは知ってるっつーの!! 「中学の時とかさ、他のやつらと下ネタでバカ騒ぎしたり、AV鑑賞会したりして、女の子に興奮するのは当たり前なんだって思ってた」 「そりゃ……そうだろ……」  健全な男子なら、別におかしいことじゃないだろ?  だから何だよ!?俺一体何聞かされてんの!? 「だったら、こんなことやってないでさっさとED治せよっ!!あ~もぅアホらしっ!……やめだやめっ!!」  佐々木は話してばかりの相川に痺れを切らし、起き上がった。  こいつ結局EDの相談がしたかっただけか?それとも、俺の裸見たらやっぱり萎えたってか?  どちらにしても、この様子じゃもうヤらないだろ――……   ***

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