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いじっぱりにキス 第12話(佐々木)
裸でいるのもマヌケなので服を着ようとベッドから出て服に手を伸ばした。
その瞬間、後ろから羽交 い締 めにされてまたベッドに転がされていた。
「おわっ!ちょっ……なんだよっ!?」
「でも俺、お前といても興奮するんだよね」
相川が耳元でボソリと呟いた。
後ろから羽交い締めにされているので表情は読めない。
「……は?いやだからそれは……え?EDになってからの話じゃなくて?っていうか、放せよっ!」
「じゃなくて。昔から。お前の笑った顔とか拗ねた顔とか好きだし、お前に彼女が出来た時はなんか……彼女に嫉妬したし……他のやつの前でお前がちょっと素見せてたらムカついてたし……」
あん?ちょっと待て、それって……
「それは……単に仲良しの友達が自分以外と仲良くしてたら、取られたみたいで悔しいってだけの話じゃね?」
いくらもがいても相川が放してくれないので、無駄な体力を使うのをやめた。
佐々木が力を抜くと、相川も少し力を緩めた。
「う~ん、俺も最初はそうかなぁって思ってたんだけどさ、中学の時にみんなで川に遊びに行ったことあっただろ?あの時水遊びでびしょ濡れになったお前の身体見て勃っちゃったんだよね~……まぁ、その時は何にでも反応しちゃうお年頃なのかな~ってくらいだったけど……」
「……え?」
あ~俺の身体見て?まぁ、思春期だからそういうこともあるよな…………って、何それ!?ねぇだろ!?
こいつが話をまとめるのが苦手なのは知ってるが、内容が内容だけに要領を得ない相川の話にイラついてきた。
「だから結局お前は何が言いたいんだよ!!いいか?いつも言ってるだろ!?要点をまとめろっ!要点をっ!!お前余計な話が多すぎる!!」
「ん~?うん、それでね?高校の時の友達に言われたんだけど、俺の好きになる子ってみんなお前に似てるんだってさ。お前気づいてた?」
聞けよこらっ!!って、は?俺に似てた?お前の彼女が?
佐々木の言葉を軽くスルーして相川が話を続ける。
そして、話の合間に背中にキスを落としていく。
その度に熱い息がかかる……
いやいや、大事な話をしてる時にこの体勢おかしくね!?
そう思うのに、地味に相川に捕まったままなので起き上がることも逃げることもできない。
「っお前の彼女って……巨乳が多かったってことくらいしか……っぁ」
「うん、巨乳も好きだけどな。でも、大抵顔や仕草にお前を重ねてた。振られるときのセリフも毎回『颯太 君って、他に好きな人いるんでしょ』だったんだよな~……あれって、無意識にお前と重ねてたこと見抜かれてたんだろうな~……」
相川が淡々と話しながら佐々木の耳元を愛撫してくる。
やめろバカっ!耳元で喋るなっ!!俺お前の声……っ弱い……っ
「ちょっとっ……何言ってんのかわかんないんだけど……っん」
「だ~か~ら~、俺もだいぶ前からお前のことが好きだったって話!俺はバカだから気づくのにかなり時間かかったけど、お前は頭いいんだから察しろよっ!!」
グイッと肩を布団に押し付けられ仰向けになった佐々木に、相川がまた覆いかぶさって来る。
「そんなの、わかるかっ!!!っっん~!」
思わず怒鳴った佐々木の口を相川が塞いだ。
絡めてきた舌が煙草のせいで苦い……
なんだこのキス……
酒臭いキスか煙草臭いキス。
こいつとのキスはろくなもんじゃねぇな……
心の中で苦笑いをした。
苦さのせいで唾液の量がいつもよりも多い気がする……
相川の舌が動く度に、唾液が口唇の端から零れた。
「んっ……はっ……っんん゛……」
ヤバい……相川のキス気持ちいい……
じゃなくてっ!!
つまり、どういうことなんだってばよっ?
本当に相川も昔から俺のことが好きだった……のか?
なんだか情報処理が追い付かなくて、感情のコントロールができない……
それもこれも、全部お前がグダグダ余計なことばっかり言ってたせいだっ!!
「っっ……」
「翠って、結構泣き虫だよな」
相川が苦笑しながら、濡れた瞼にキスをした。
「ぅ……ぅるさぃっ!!!」
「好きだよ、翠」
「……っ……ぅん」
結局、相川はただからかっているだけなのかもしれない……
でも……相川があの頃と同じ顔で笑ったから……好きだって言ってくれたから……
抱かれる理由なんて、もうそれだけでいいと思った……
……あ~くそっ……俺も好きだバカっ……!
***
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