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いじっぱりにキス 第15話(佐々木)
気が付くと、相川の腕枕で横になっていた。
いや、何だよこれっ!?
佐々木はテンパりすぎて思わず相川の顔面を平手でペチンと叩いた。
「痛ってぇ~!!何!?起きていきなりそれ!?」
「あ……悪いっ!つい……俺どれくらい寝てた?」
慌てて起き上がる。
「ついって、もぉ~!!……あ~……まだ10分くらいかな。身体大丈夫か?」
顔面を手で押さえて唸っていた相川が、一応律儀に答えてくれた。
「え?あぁ、身体は別に……俺、シャワー浴びて来る」
尻に違和感はあるけど、十分にほぐしてくれていたせいか血は出ていないようだ。
ただ、イかされまくったせいか、腰というか腹の中と太ももがダルイ……
でも初めての時に比べたら全然マシだ……
ベッドから出ようとしたら相川に手を掴まれた。
「なに?え、俺何かした?」
実は途中から意識が朦朧 としていたので、あまりよく覚えていない。
もしかして、何かやらかした……?
「なぁ、なんで翠 は、俺のこと相川って呼ぶの?」
佐々木の心配をよそに、気怠 そうな顔で相川が見つめて来る。
「……は?だってお前相川じゃんか」
自分の名前忘れたのか?大丈夫か、こいつ?
「そうじゃなくて……昔は『颯太 』とか、『そうちゃん』って呼んでただろ?」
「あぁ……いや、それは子どものころの話だし……」
「まぁ、俺も『あっくん』から『翠』に変えたから、『そうちゃん』から『颯太』になったのは別にいいとして、それが高校くらいから急に名字になっただろ?ずっと不思議だったんだよな……」
え~と……それは今俺がシャワー行こうとするのを引きとめてまでするほどの話か?
後じゃダメなのか?ん?
「……そういうお年頃だったんだよ。名前で呼ぶのが気恥 しいっていうか……」
本当は……どんどん自覚していく自分の気持ちを隠すために、お前との境界線を引きたかったから……なんて言えるかっ!!
「お前は自分の名前をからかわれるのが嫌だからって大学で知り合った奴には名字しか教えてなかったから、俺もそれに合わせて『佐々木』って呼んでるけどさぁ……別にお前まで『相川』って呼ぶことないだろ?」
「……結局、何が言いたいんだよ?俺、早くシャワー浴びたいんだけど……全身ベタベタだし……」
相川の言いたいことがよくわからない。
ちょっとイライラして首筋を掻いた。
相川は、少し迷うように視線を泳がせると、チラッと子犬のような目で見上げて来た。
「……また下の名前で呼んで欲しい……」
「は?」
思いがけない言葉に、思わず首を掻いていた手が止まる。
なんで急にそんなこと……
「だって、お前さっき……呼んだだろ?」
「さっき?」
「ヤってる時。『颯太』って……『そうちゃん』って呼んだだろ?」
ぅわっ……マジかっ!!!
思わず自分の口を押さえる。
「そんなの覚えてねぇよっ!!」
「いや、呼んだし」
「だからっ……こっちは朦朧としてんだから、それどころじゃないっつーのっ!!!」
「え?じゃぁ無意識?何それ可愛い。っていうか、朦朧とするほど俺とのセックス気持ち良かったの?」
さっきのしおらしい態度はどこへやら、調子にノった相川がニヤニヤと佐々木を見る。
「~~~~~っっ!!!……ったよ……」
俺の中に挿入 っていた相川の熱を思い出して、一気に顔が熱くなる。
「え?なぁに?聞こえな~い」
「気持ち良かったっつってんだよっ!!満足かっ!?」
照れて赤くなった顔を見られたくなくてプイッと横を向く。
くやしいけれど相川はキスもセックスも上手い。
でも、何より……好きなやつに抱かれて気持ち良くないわけないだろ……?
「やばっ……勃った……」
「なんでっ!?今どこにそんな要素あったっ!?」
「翠がそんな顔で気持ち良かったとかいうからぁ~……ってなわけで、もっかいね」
「え!?冗談だろっ!?俺もうムリって、ちょっ……」
「だぁいじょうぶだって!優しくするからっ!」
絶対嘘だぁああああああああ!!!!!
満面の笑みを浮かべた相川に押し倒され、結局その日は一日中抱き潰された……
……し……しぬっ……何なのこの底なし性欲バカ……
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