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キスはしてもいいですか!? 第1話(相川)

 幼馴染に勃起した――  EDになってから半年、何をしてもダメだったのに、酔っ払っていつものノリで幼馴染の翠にキスをしたら、なぜか勃起した。  その後も、やっぱりEDが治ったわけじゃないのに、翠にだけは反応していた。  幼馴染だし、親友だし、翠は男なのになんで?とわからないフリをしていたけど、本当は薄々気づいていた――  そもそも俺がEDになったのは、翠のことが――…… ***   「で、何なんだ?」  相川の隣で、夏樹が不機嫌そうに缶コーヒーを開けた。  ここは大学の近くの公園だ。  公園と言っても、遊具があるわけではない。  緑が多く、噴水のある小さな池があってその周りをぐるっと一周できるようになっている。  学生が利用するのはもちろんだが、ウォーキングやランニングをする人、犬の散歩をする人など、近隣の人たちにも結構利用されている。  俺たちは、その中でも少し人気(ひとけ)がない場所にある、緑の葉っぱが生い茂った桜の木の下のベンチに腰掛けていた。 「お前が雪夜にも佐々木君にも内緒でって言うから、雪夜には残業でちょっと遅くなるって嘘ついて来てやってんだ。さっさと用件言えよ。くだらない内容だったら怒るぞ」 「……あの……さ……」  夏樹がイライラしているのはわかるが、こっちだって好きであんたを呼んだわけじゃない!  でも、他にこんなこと聞ける人なんていないし…… 「その……ぶっちゃけ、あんたって雪ちゃんとどれくらいの頻度でヤってんの?」 「……ぁ?」  相川が思い切って切り出すと、夏樹が缶コーヒーに口をつけたまま固まった。 「いや、だから、セックスだよっ!!」 「……なんでそんなことお前に話さなきゃいけないんだ?」  夏樹が缶コーヒーを持つ手をゆっくりと下げながら、眉間に皺を寄せる。 「そうなんだけどさぁ……俺そういうのよくわかんねぇから……」  口調は静かだが、夏樹がキレかけなのは缶に指がめり込む音と雰囲気でわかった。    そんな怒らなくてもいいじゃんか……こっちだっていろいろあんだよっ!! 「……はぁ~……ったく、あのな、ちゃんと順を追って話せ。なんでそんなこと気になるんだ?」  夏樹は、しょんぼりと項垂れる相川をしばらく黙って見ていたが、ふざけているわけではないと察したのかため息を吐いてちょっと雰囲気を和らげた。 「その……この間……(あきら)とさ――」 ***  なんだかんだあって、長年幼馴染で親友だと思っていた翠を抱いた。  1回目は、半分酔った勢い。  それから付き合っていると思っていたのは俺だけで、翠は俺が酔っていたせいで覚えてないと思って、全部なかったことにしようとしていた。  2回目は、ちゃんと俺の気持ちを話した……つもり。  ちゃんと翠を抱きたいと思ったから抱いた。  何でも知っていると思っていた親友の、初めて見せる顔に自分でも驚くほど興奮して……EDで溜まってたせいもあるかもしれないけれど、一日中抱き潰した。  結果、翠のお尻が腫れて、翠がブチ切れた。  それ以来、翠はずっと不機嫌で、相川は触れるどころか、二人きりだと家に入れてもらうことすら許されず、かれこれもう2週間が過ぎようとしている。 「……あぁ……なんだお前ら、ようやくくっついたのか」  夏樹が驚きもせずにあっさりと納得する。  そういや、雪ちゃんが夏樹さんは俺らのことに気づいてたとか言ってたっけ?  俺らのっていうか、でも俺が翠を好きだって気づいたのは本当に最近なんだけどなぁ…… 「くっついたっていうか……俺は付き合ってるつもりだけど、あいつはどう思ってんのかわかんねぇ……一応話しかけたら返事はしてくれるけど、全然触らせてくれないし、家にも入れてくれないし……っていうか、先にあいつから好きだって言ってきたのに、なんでこうなるの?わけわかんねぇ……なぁ、どうしたらいいと思う?」  相川がチラッと夏樹を見ると、夏樹が視線を前に向けたまま、小さく息を吐いた。 「ん~……そうだな、とりあえず一つ言えるのは……」  そういうと、夏樹が缶を持っている手をスッと相川の肩に回して、グイッと抱き寄せた。 「う、んっ!?」  なんだこいつ、見かけよりも力あるな……  そんなに力を入れて引き寄せられた感じはしないのに、わりとガタイのいい相川が簡単によろめいた。  女の子なんか、この顔にこんな風に抱き寄せられたらそりゃだわ……あ、なんかいい匂いする――…… ***

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