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キスはしてもいいですか!? 第2話(相川)

 相川の肩を抱き寄せた夏樹が、ニコッと笑いかけてきた。 「あのな、相川君?よぉ~く聞きなさい?」 「え?あ、うん」 「お前なぁ……ほぼ処女の状態の奴をいきなり一日中抱き潰したらそりゃ(けつ)も腫れるわっ!!童貞じゃないんだから加減くらいしろよっ!!」  夏樹が相川の耳元で声を押し殺して怒鳴(どな)った。  内容が内容なので周囲に聞こえないようにしているだけなんだろうけど、それにしても顔近すぎじゃないかっ!?  なんか遠くの方でこっちを見ている女の子たちから小さくキャーッ!って黄色い悲鳴が聞こえて来たぞ、おい……  まぁ、それはともかく…… 「……ぅ~……だってっ!!……あいつめちゃくちゃエロい顔するし……すっごい気持ち良かったからつい理性が飛んじゃったんだもん!!仕方ねぇだろっ!?」  相川も一応声を抑えながら反論する。 「だもん!じゃねぇよっ!……気持ちはわからんでもないけど、さすがにヤりすぎだ。お前、女の子抱く時にもそんな無茶苦茶な抱き方してたのか?」 「いや……女の子にはそんなことしねぇよ!?せいぜい2回で止める。だって女の子ってなんか力入れたらすぐに壊れちゃいそうだし……」  女の子はか弱くて(もろ)いから守ってあげなきゃいけない。  ガキの時は照れ隠しに意地悪をしたり泣かせたりしたけど、思春期頃には自然と女の子は守る対象になっていた。  だから、セックスでも割れ物を扱うみたいに優しくしなきゃって……  でも、そもそも、彼女に対してそんな際限(さいげん)なくヤりたいと思ったことがない…… 「じゃあ、あいつにもそれくらいで止めてやれよ」 「だって、治まらねぇんだもん!!俺のが!!」 「知るかっ!!後は自分で処理すりゃいいだろ!?それかあいつに手でやってもらうとか、とにかく他にもいろいろ方法はあるだろう?」 「手じゃ物足りない……」 「あのなぁ、いくら男でも……っていうか、男だから余計に、()れられてる方は負担が大きいんだから、好きならちゃんとあいつの身体のことも考えてやれよ」  夏樹が呆れ顔で相川を見た。 「……あんたは、どんな時でも余裕があるのかもしれないけど、俺は……そんな余裕ねぇんだよ……(あきら)のことが恋愛的な意味で気になりだしたのも最近だし……自分でも……どうすりゃいいのかわかんねぇんだもん……」  俺だって……無理させちゃダメだとは思うけど……  翠のことは大切にしてやりたいんだけど…… 「あ゛?ばぁ~か。俺だって余裕なんてねぇよ。俺もしょっちゅう理性とびそうになるしな」  夏樹が、軽く相川の後頭部を(はた)いた。 「え、あんたでもそんななるの?」 「そりゃ、好きな子抱いてれば……めちゃくちゃ気持ち良いし、可愛いし、全てが愛しいから全部食べたくなって本能的に抱き潰したくなる。でも、それで相手を傷つけてたら本末転倒だろ?だいたい、俺が本気で加減しないで抱いたらそれこそ雪夜なんてぶっ壊れちゃうよ。あんな華奢な身体してんだから。まぁ……今までにヤバかったことも何回かあるけど、一応ギリギリ理性は保ってたよ」 「そうかぁ……そうだよな……」  俺もそれなりに女の子との経験はあるけど、所謂(いわゆる)勝ち組で常に余裕に見えるこの夏樹さんですら、恋人にはいっぱいいっぱいなのか……  そう考えると、ちょっとだけ安心して、ちょっとだけ不安になった。   *** 「とりあえず、お前は佐々木君とどうなりたいんだ?」 「え?そりゃ~……好きだし、ヤったし……恋人以外にあるの?」  どうなりたいって、どういう意味なんだ? 「ヤりたいだけならセフレでいいし、ただの興味本位だったんなら、なかったことにして今まで通り親友として接してやるのも優しさかもしれないぞってこと」 「興味本位なんかじゃねぇよっ!!たしかに……あいつもEDが治るまではセフレ兼親友でいてやるよって言ってたけど……そういうんじゃねぇんだよっ!」  思わず大きな声を出してしまって、夏樹に口を押さえられた。 「お前、公共の場で堂々とED宣言すんなよ!!」 「あ、ごめん……」 「いや、まぁ俺は別にいいけど。EDなのはお前だし。でもあんまりデカい声でする話じゃねぇだろ。なんなら、カラオケでもいくか?ある程度声デカくても誤魔化しが聞くだろうし」  夏樹からそんな提案をされるとは思っていなかったので、少し驚いた。  わざわざ呼び出したのは相川だが、実は夏樹と相川はあまり仲が良いとは言えない。  会えばいつも口喧嘩をしてしまうので、普段はだいたい翠が間に入ってやり取りをしている。  今日呼び出したのは、こんな相談が出来る相手が他に思いつかなかったからなのだが……  なんだかんだでこの人、結構真剣に聞いてくれるんだな……  相川の中で、ちょっと夏樹の好感度がアップした―― ***

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