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キスはしてもいいですか!? 第5話(相川)

 ――それは、およそ半年前のことだった。  その日、飲み会で酔って、王様ゲームで(あきら)と当たった俺は、王様の言う通りに翠とポッチーゲームをした。  付き合いが長いので、顔を見れば翠は途中で折る気満々なのがわかったが、何となく魔がさして翠が折る前に食べ進んでキスをした。  ちょっとふざけただけのつもりだったのだが、その時軽く勃起した。  俺がEDになったのはその次の日からだった。 *** 「ん?ちょっと待て。EDになってから誰にも勃たなかったのに、あいつとキスしたら勃ったっていう話じゃなかったのか?逆になってねぇか?」  夏樹がちょっと困惑顔で相川の話を中断した。 「いや、だから……そもそもEDになったのは、翠とキスして勃起した翌日で……」 「おまっ……だって、半年もそのED、原因不明だったんだろ?」 「……うん」 「原因めちゃくちゃはっきりしてるじゃねぇかよ!?」 「そうなんだけどぉ~!!だって、親友だよ!?幼馴染だよっ!?男だよ!?まさかと思うじゃんかあああああ!!!」 「あ~……まぁ、そりゃそうだろうけど……」 「でも、半年経って、たまたま酔ってまた翠にキスしたら、勃起したから……もしかしてって……」 「あいつのこと好きかもって?」 「……うん」 「まぁ、一応好きなんだろうけど、あいつを好きになったこととEDの因果関係はわからんな。とりあえず、お前があいつのことちゃんと恋愛的な意味で好きで、あいつにはちゃんと勃つって言うならそれでいいんじゃね?」 「うん。俺もそう思う。翠で勃つならいい」  そうなのだ。  EDに関しては、翠で勃つことがわかったし、ちゃんと中折れすることもなく最後までできたし、それどころかなかなか萎えないくらいだったし……正直、相川的にはもうEDの悩みはなくなっている。 「ただな、お前が本気ならちゃんとそう言ってやれよ。たぶん、あいつにしてみれば、お前はただEDで自分にしか勃たないから、自分は性欲の()け口に使われてるくらいにしか思ってないだろ」 「えええええ!?だって、俺はちゃんとあいつに好きだって言ったよ!?セフレじゃなくて付き合いたいって!」 「あ~……まぁ雪夜も俺がいくら好きだって言っても、いまだに信じてくれてないところがあるからな~……佐々木も雪夜と似てちょっと他人の愛情を素直に受け取れない感じがありそうだから、常に気持ちを伝えて安心させてやるしかないだろうな」 「え、雪ちゃんとラブラブなんじゃねぇの?」 「そうだと嬉しいけどね~……少なくとも、ラブラブって言えるほど雪夜が俺に甘えてくれたことはないよ」  夏樹が少し淋しそうに笑った。 「へぇ~?でも、俺らにあんたの話をするときは雪ちゃんめちゃくちゃ嬉しそうだけどなぁ~」 「え、それホントに!?……ふぅ~ん……ちょっと相川君!その話詳しく!!」  夏樹は笑顔で相川の両肩をガシッと掴むと、ガクガクと揺さぶってきた。 「あわわわ、ちょっと待ってえええ、今話すからぁああ!!――」  一応夏樹には相談にのって貰っているので、相川は自分が知っている限りの、雪夜から聞いた惚気(のろけ)話をしてやった。 「そうかぁ~、雪夜そんなこと言ってたんだ~?へぇ~……」  さっきまで相川の話を聞くのにだいぶうんざりした顔をしていた夏樹が、少し頬を紅潮させて嬉しそうに笑った。 「……なんか意外。あんたモテそうだから、恋愛とか慣れてそうなのに、それでも悩むんだな」 「モテるけど、本気で好きになったのは雪夜が初めてだからな。しかもそれが同性ときたら、今までのスキルなんて全然役に立たない。全部一からだよ。でも、それが全部雪夜とだと考えるとまた楽しいし、嬉しいんだよ」  モテるのは否定しないんだな。  まぁ、その容姿じゃモテないわけがないだろうけど…… 「なるほど……よしっ!俺、今日あいつん家に押しかけて、もう一回ちゃんと話してみる!」 「まぁ、あんまり無理強いはすんなよ?」 「うん!!」 「じゃあ、おっさんはそろそろ帰ってもいいか?」 「あざーっす!」 「はいよ~」  軽くピョコンと頭を下げると、夏樹が苦笑しながら相川の頭をポンポンと撫でた。  この人、雪ちゃんにもよくしてるけど、これ無意識のクセなのか?  俺にまでするとか……    ちょっとキュンとした!!  いやいやいや、今のは気のせいです!!ちょっといい奴だな~って思っただけだから!!  大丈夫だからぁああああああ!!??  相川は、意味不明な言い訳をしながら夕日に向かって……いや、佐々木の家に向かって駆け出した――…… ***

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