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キスはしてもいいですか!? 第8話(相川)

「あ、相川ちょっとそれ取って」 「ん~……って、ちょっと待てっ!!」  相川は、(あきら)に言われて手元にあったノートを取った。  渡しかけて、ハッと我に返る。 「何だよっ!?」 「え、待って?今俺たち何してるの!?」 「何って……俺の家庭教師のバイト用の資料作りだけど?」 「そうですね!!そうじゃなくて、話は!?」  冷やし中華を食べた後、翠はさっさと食器を片づけると、なぜか机の上に資料をいっぱい広げ始めた。  家庭教師のバイトをしているので、担当している子に出す宿題や苦手なところをわかりやすく説明するためにいろいろと工夫して資料作りをしているらしい。  相川も昔から翠に勉強を教えて貰っていたので見慣れた光景だ。  でも、まだ俺の話ちゃんと終わってないよね!? 「あぁ、それはちゃんと聞くよ?だから話す内容が固まったら話せ。さっきからお前言ってることがいつも以上に支離滅裂だし。一旦落ち着いてちゃんと考えてから話せ」 「あ、はーい」  翠に言われて、一応口を閉じて考える。  話す内容が固まったら……え~と、だから……  え、俺結構固まってたと思うんだけど?ちゃんと考えた結果があれなんだけどな~…… 「はい!」 「はい、相川君」  挙手をすると、翠が資料から目を離さずに手で先を促した。 「キスはしたいです!!」 「……はぁ……なぁ、それ一体どういうこと?」  翠がため息を吐くと、ペンを置いて眉を顰めながら相川を見た。 「え?」 「さっきから、キスがどうのこうのって、なんでそんな話になってんの?」 「だから~……ヤりすぎたせいで翠の尻が腫れちゃっただろ?で、翠が怒って、全然相手してくれなくなって……どうしたら翠の機嫌が直るのかな~って考えてて、えっちしたせいで怒ってるんなら、えっちはもうしないって言ったら前みたいに戻れるのかな?って。でも俺はお前のこと好きだから、せめてキスはしたい!!」  夏樹にも、翠の身体を労われと言われたし。  この際、えっちは我慢する……でも、付き合ってるんだから、キスくらいはしたいですっ!! 「ん~?……ぅん、え~と……セックスはもうしないってこと?」 「うん」 「でもお前、まだED治ってないんだろ?」 「うん」 「俺にしか勃たないんだろ?」 「うん」 「俺としなかったら、また溜まるんじゃねぇの?」 「うん、でも、俺別にお前にしか勃たないからお前を抱くんじゃねぇし。だから、お前がイヤだって言うなら抱かない。半年勃たない状態で何とかなったんだから、まぁ大丈夫だろ。でも、キスくらいはしたい!!」 「お前、俺とキスしたら勃起するんじゃなかったっけ?」  あ……そうだった…… 「……うん!」 「で、それどうすんの?」 「あ、勃ったら後は……お前をおかずにしたら自分で処理できるから大丈夫!!」  一応、翠への気持ちをちゃんと自覚するまでは、翠で反応しちゃった時はそうやって処理してたし…… 「本人目の前にしておかずって言うなバカっ!!」 「お世話になってます!!」 「世話した覚えはねぇよっ!!」  翠が丸めた参考書で頭を叩いてきた。 「痛っ!だってぇ~……おかずにするくらいいいじゃんかぁ~!!」 「……別に……いいよ」 「え、じゃあおかずにしていい?」 「そうじゃなくて……セックスしてもいいっつっての!!」 「やったー!……ん?セックス?おかずじゃなくて?」 「おかずも別にいいからっ!……ただ俺の前で言うなっ!!」  翠が思いっきり顔を顰めた。  この顔は~……照れ隠しの顔だな。じゃあ、ホントにいいのか?でも…… 「でも、お前セックスは嫌なんじゃないの?」 「い……嫌ってわけじゃねぇよ!ただ、この間みたいに一日中するのはダメだからな!?」 「それはもう!!絶対にしません!!3回までで止めときます!!」 「さ……3!?いや、2回までにして?」 「え~……仕方ないなぁ……じゃあ、2回ね」  一旦ヤりだしたら、2回じゃ絶対治まらない気がするけど……そこは頑張って我慢っ!!頑張れ俺!! 「はい!」 「はい、相川君!」  翠は、話す時にいちいち挙手をする相川に対して特にツッコまない。  これも、俺らの中では昔からよくしているやり取りだからだ。 「じゃあ、とりあえずキスしてもいいですかっ!?」 「お前の頭の中はそれしかねぇのかよ……」  翠が呆れ顔で相川を見た。 「ない!!だって、2週間もちゃんと話してないし、お触り禁止だったし……」 「あ~も~わかった!いいよ」 「やった!」  ようやく翠からお許しが出たので、久しぶりに翠に抱きつく。    ん~……やっぱりこれが一番落ち着く…… 「ちょ、待てっ……お前力強すぎっ!!緩めろっ!」 「え?ごめん、思わず……」 「ゲホッ……ふっ……相変わらず馬鹿力だな……」  力を緩めると、翠がちょっと咽て、ふっと苦笑した。   「……」 「……え?相川……っ!?」  もう俺、限界ですっ!!  不意打ちにそんな可愛い顔で笑う翠が悪いっ!!!  相川は一瞬にっこり笑って、翠を床に押し倒した――…… ***

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