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キスはしてもいいですか!? 第10話(相川)
「で?何でおっさんはまた呼び出されたのかな?」
何でもない公園のベンチなのに、すらっと伸びた足を軽く組んで、背もたれに少し斜めに寄り掛かりこちらを向いている姿がやけに絵になる。
そんな「モデルかよ!」とツッコミたくなるようなおっさん、いや、夏樹が軽く顔を顰めて相川を見た。
「だからぁ~、おっさ……夏樹さんの言う通りに翠の身体を労わって、手でするだけで我慢してるんだけどさぁ~……いつになったらちゃんと最後までできるの?」
「……それは、俺に聞くより佐々木に聞くべきじゃないか?」
「だぁ~って……俺もいろいろ考えてんだよ?お願いしたり~、交換条件出したり~……」
「へ~……」
夏樹が気のない返事をしながら遠くを見た。
「ちょっと、夏樹さん!!何そのやる気のない返事!!俺の話ちゃんと聞いてんの!?よそ見しないでよっ!!」
「お前は俺の彼女かよっ!!」
「え……俺には翠がいるから、おっさんはちょっと……ごめん……」
「何で俺が振られたみたいになってんだよ!?俺だって雪夜がいるからお前なんざいらねぇっつーの!!」
夏樹がスパーンと相川の後頭部を叩いた。
なんかこの気持ちいい程の鮮やかな叩き方、ちょっと翠に似てる……けど!!
「ひどいっ!!」
「何がだよっ!?」
「俺だってそれなりに可愛いんだからね!?」
「何のアピールだよっ!?だいたい、可愛いっつーのは雪夜のことを言うんだよっ!!」
「それを言うなら俺の翠だって可愛いし!!」
「俺の雪夜が世界一可愛いに決まってんだろうがっ!!」
「雪ちゃんはたしかに可愛いけど!!翠も負けてねぇよ!?」
「おまっ……って、待て!これ一体何の話してんだよっ!?」
「え……何だろう?」
ふと我に返って、二人で顔を見合わせる。
前回よりも人通りが少ないとはいえ、やはりあまり大きな声でできる内容じゃないので、今日も声は抑え気味で顔を近づけて話していた。
「はぁ~……お前の相手してる佐々木は凄いわ……」
夏樹が大きなため息を吐きながら、頭を抱えた。
「え~?そりゃまぁ長い付き合いだし?あ、それにやっぱ愛でしょ!うん!」
「はいはい。愛されてんなら良かったね~。それじゃそういうことで……」
「待ってぇ~~!!だからまだ何も解決してないですぅうううううう!!」
立ち上がろうとした夏樹の腰にしがみつく。
「ああ゛?離せ、こらっ!!お前に抱きつかれても嬉しくねぇよっ!!」
「俺も別におっさんに抱きついても嬉しくねぇよ!」
「だったら離せよ!?」
「話を聞いてくれたら離す」
「話って……あ~……いつになったら最後までやらしてくれるのかって?そんなの佐々木に直接聞け!!」
「聞いてもはぐらかされるし……」
相川がしょんぼりと項垂れると、夏樹がまた大袈裟にため息を吐いた。
「……じゃあ、お前とはやりたくないってことじゃないのか?」
「ええええ!?だって、俺がえっち我慢するって言ったら、してもいいって言ったのはあいつだよ!?」
「ふ~ん……」
相川の話を聞いた夏樹が、少し視線を上にしてしばらく考え込んだ。
ようやくちゃんと話を聞いてくれる気になったらしい。
相川は、夏樹の思考を妨げないように、口を閉じて静かに次の言葉を待った――……
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