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第16話 ヒートとラット ③ ー伊吹sideー

「…大丈夫?」 そこには柚のヒートを全身で浴びながらも片手でヒートの柚を支え、もう片方の手で伊吹を支える孝司の姿があった。 「ありがとうございます。孝司さんが支えてくれなかったら、蒼と二人して倒れているところでした」 「それは…きにしないで…」 孝司もラットにならないよう、理性を必死に奮い立たせていた。 「本当は蒼くんを運ぶのを…手伝ってあげたいけど……ごめんね…、今は…自分の事でいっぱいいっぱいだ…。伊吹くん…一人で…大丈夫?」 孝司は苦しそうに肩で息をしだした。 「俺は大丈夫です!」 伊吹が力強く答えると、孝司は苦しそうだが、微笑み、 「柚は…俺が…連れて帰る…。だから、伊吹くんは……蒼くんを…頼む…」 そういうと、孝司は掴んでいた伊吹の腕を離すと、急いで自分のジャケットのポケットから薬を取り出す。 そして蒼同様、緊急ラット抑制剤を飲み込むと柚を抱きかかえ、店を出た。 「い…ぶき…?」 少し意識がしっかりしてきた蒼が、寄り掛かっていた伊吹から、体を離した。 「‼︎蒼!大丈夫⁉︎」 蒼は声に出しては答えず、首を横に振る。 蒼、そんなに…… 「蒼、あそこに停まってるタクシーまで行ける?」 伊吹が店の中見える、外に停まっていたタクシーを指差すと蒼はこくんと頭を縦に振った。 「蒼、俺の肩に捕まって…」 伊吹は蒼に肩を貸すと、力を振り絞ってタクシーまで連れて行き、急いで二人、タクシーに乗り込んだ。 「できるだけ早く、〇〇までお願いします‼︎」 伊吹は住所をタクシーの運転手に伝えると、隣で苦しむ蒼の手を握った。 抑制剤飲んだのに、全然効いてない… 蒼はなんとか理性を保とうと、するが息は上がり、冷や汗もかいている。 早く家に着いて‼︎

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