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第40話 ーー突然の電話 ① 蒼sideーー
「蒼〜。電話〜」
チャーハンを作る蒼の後ろから、元気な伊吹の声がした。
電話かー。
出ないといけないけど、今、卵入れたばかりだから、このまま一旦火を止めると、べちゃべちゃなチャーハンになるし…
手が離せない…。
「伊吹、電話に出て」
「はーい」
元気な伊吹の声がする。
可愛いな。
うしろを向きながらか、携帯に出る伊吹の姿を見て蒼はほっこりした。
「蒼、登録してない番号からの電話だけど、どうする?」
「んーーん……。誰か携帯変えたかもしれないから、一応出てて」
蒼は少し考えてから、もう一度伊吹に電話に出てもらうように頼んだ。
「了解」
伊吹は何やら話をして電話を切ったようだが、明らかに様子がおかしい。
ん?
何かあったかな?
「伊吹〜、出来たよ〜」
蒼は嫌な予感がしつつも伊吹を呼ぶ。
「……」
「伊吹?」
「え?」
名前を呼ぶが伊吹は上の空で、蒼の言葉は聞こえていないようだった。
「ご飯できたよ。って言ったんだけど…。聞いてた?」
蒼はいつものように微笑む。
「あ…、ごめん。聞いてなかった…。今行く」
伊吹は何かを隠すように、取り繕った笑みを溢す。
「?どうかした?」
もう一度蒼が伊吹に聞いたが、
「大丈夫…」
と、伊吹は言うだけだった。
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