48 / 194

第50話 ーーまさか… ② 蒼sideーー

普通ベータには、そんな事感じない。 もし伊吹がオメガの体質なら考えられなくはない。 それならこの事は、とりあえず様子を見るため少しの間伊吹には言えない。 「わかった。言わない」 「ありがとう」 柚はホッとした表情になった。 「じゃあ、俺からもお願いがある」 「?」 「何かあったらすぐに俺に連絡する。俺からもしたいけど、それが見つかったらヤバいことになりそうだから、やめておく。だから絶対に些細な事でも連絡する!!わかった?」 蒼は出来るだけ優しく、でも『連絡する』のところは強調した。 「わかった…」 柚は弱々しく笑った。 「あ、もうすぐ孝司帰ってくるから帰るね。今日は色々聞いてくれてありがとう」 本当はこのまま帰すのは心配だな。 でもDVの証拠が揃ってない時に動くのは得策ではない…… 蒼は自分の力の無さを悔しくておもったが、 「わかった。帰り気をつけてな」 「ありがとう」 笑顔で帰る柚を見送った。 これからどうするか…… 泰樹(やすき)兄さんに相談するか…… 蒼が考え事をしながら廊下の曲がり角を曲がった時、 ガチシャン! 飲み物を持った店員とぶつかり、蒼の服かわジュースで濡れた。 「す、すみません‼︎」 高校生ぐらいの男の子が慌てて、蒼の服についたジュースを拭こうとする。 「いいよ。俺もぼーっとしてたから気にしないで。それより、君は大丈夫?」 「大丈夫です‼︎本当にすみません」 「よかった。それじゃ、バイトがんばってね」 それだけ言って蒼はその場を去った。 それでも、こう豪快にシミを作ったまま帰るのもな…… 蒼はトイレの石鹸を使い、シミが薄くなるように、つまみ洗いをしたのだった。

ともだちにシェアしよう!