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第50話 ーーまさか… ② 蒼sideーー
普通ベータには、そんな事感じない。
もし伊吹がオメガの体質なら考えられなくはない。
それならこの事は、とりあえず様子を見るため少しの間伊吹には言えない。
「わかった。言わない」
「ありがとう」
柚はホッとした表情になった。
「じゃあ、俺からもお願いがある」
「?」
「何かあったらすぐに俺に連絡する。俺からもしたいけど、それが見つかったらヤバいことになりそうだから、やめておく。だから絶対に些細な事でも連絡する!!わかった?」
蒼は出来るだけ優しく、でも『連絡する』のところは強調した。
「わかった…」
柚は弱々しく笑った。
「あ、もうすぐ孝司帰ってくるから帰るね。今日は色々聞いてくれてありがとう」
本当はこのまま帰すのは心配だな。
でもDVの証拠が揃ってない時に動くのは得策ではない……
蒼は自分の力の無さを悔しくておもったが、
「わかった。帰り気をつけてな」
「ありがとう」
笑顔で帰る柚を見送った。
これからどうするか……
泰樹(やすき)兄さんに相談するか……
蒼が考え事をしながら廊下の曲がり角を曲がった時、
ガチシャン!
飲み物を持った店員とぶつかり、蒼の服かわジュースで濡れた。
「す、すみません‼︎」
高校生ぐらいの男の子が慌てて、蒼の服についたジュースを拭こうとする。
「いいよ。俺もぼーっとしてたから気にしないで。それより、君は大丈夫?」
「大丈夫です‼︎本当にすみません」
「よかった。それじゃ、バイトがんばってね」
それだけ言って蒼はその場を去った。
それでも、こう豪快にシミを作ったまま帰るのもな……
蒼はトイレの石鹸を使い、シミが薄くなるように、つまみ洗いをしたのだった。
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