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第51話 ーー言えない ① 蒼sideーー
「ただいま」
「‼︎お帰り、蒼」
蒼が玄関のドアを開けると、伊吹が走って来て蒼に飛びつく。
遅くなってごめんね。
蒼は心の中でつぶやく。
いつもは蒼が帰って来ると、子犬のように可愛く喜ぶのだが今日はそれがない。
それどころか…
「?どうした伊吹…固まって…」
「‼︎あ、なんでも…ない……。それより疲れてない?コーヒー淹れようか?」
伊吹はハッとしたような表情をしてから、それを悟られないように作り笑いをし、蒼にコーヒーを手渡した。
その笑顔を見ると蒼の心はぎゅっと切なくなり、今すぐにでも伊吹を抱きしめて、今日どうして出掛けたのか理由を言いたくなる。
でも伊吹をこの事に巻き込むことはできない……
だからこそ早く柚を助け出さないと!
蒼は不安そうに見つめる伊吹からのコーヒーを受け取ると、
「ありがとう。……ちょっと考え事したいから、隣の部屋に行ってるね…」
寝室に向かった。
そしてドアを閉めた時、伊吹が泣きそうな顔で蒼のことを見ていたのには、気がつかなかった。
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