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第103話 ーー問診 ③ 蒼sideーー

「蒼くんの気持ちは、よくわかるよ。でも今の伊吹くんでは、それはそう簡単にいきそうにないんだ」 ‼︎‼︎ 蒼は勇気が自分の思っている事がわかったと言われたことと、伊吹の体の変化があまり芳しくないこかもしれないということに、驚きと不安を覚えた。 「それは…一体……」 震える声で蒼が勇気をじっと見つめると、 「問題は三つある。まず一つ目は『伊吹くんのフェロモン量と、子宮の大きさ』だ」 「…」 「東先生はご存知だと思いますが、子宮の大きさとフェロモン数値は比例します」 勇気は和臣を見て、そして次は蒼を見た。 「でも、今の伊吹くんの子宮はまだ小さく未熟なのに、フェロモン数値はほぼ成熟しきった人と変わらない数値なんだ」 「‼︎伊吹の体は大丈夫なんですか⁉︎」 蒼の不安は大きくなり、立ち上がった。 「落ち着け、蒼。座りなさい」 和臣の一言で、溢れ出しそうになる不安な気持ちをぐっとこらえ、蒼はソファーに座り直した。 「今日の検査では、他に異常がなかったから大丈夫だが、いつ変化が起こっても不思議じゃない。だから3日に一度は通院してもらって、血液検査をして経過をみたいんだ」 「わかりました。伊吹は必ず俺が付き添って通院します」 蒼の言葉にホッとしたのか、勇気の口元が緩む。 「二つ目は蒼くんの体だ。伊吹くんの話では、蒼くんの変化が著しいと。後で血液検査させてくれるかい?」 「もちろん、お願いします」 力強く蒼は答える。 「三つ目は、蒼くんの本当の番は誰か?という事だ」 !!!! 蒼は勇気の、あまりに突拍子もない質問に驚き、言葉を失った。 「そんなの伊吹に決まってる‼︎伊吹以外にいません‼︎‼︎」 蒼の怒りにも似た声が、部屋に響き渡たる。 「蒼くん、恋は人を盲目にさせるんだ。その時はそうだと思っても、実際は違うってこともありうる」 「俺は‼︎」 「さっき、アルファとオメガの不妊治療の話ししたね」 勇気が蒼の言葉を遮り、話を続ける。 「あれね、お互い番だと思って頸を噛んだ後、どちらか1人か、もしくは2人とも本当の番にあって、別れる…って事が、ここ最近多くてね」 「でも頸を噛んだ同士は、強い絆で結ばれてるんじゃないんですか?」 蒼は不思議そうに勇気に聞き返した。 「そうだよ。それでも別れようってなると、オメガの体は本当に大変なんだ。ヒートの時の反動が大きかったり、ホルモンバランスが崩れたり…。何より、その後、また頸を噛むとなると、体はボロボロさ」 「‼︎」 「それでも番に出会い、お互いの意志のもとで頸を噛み、子供を授かりたいと思っても、それは今までの行為では、ほぼ授かれない。治療が必要になってくる。だから不妊治療もしているんだ」 「‼︎」 「それも踏まえて、蒼くんにお願いがあるんだ。蒼くんの番が伊吹くんであるか、検査させて欲しい」 「!!!!」 「伊吹くんの事を想うなら」 驚き、目を見開く蒼を真剣な眼差しで勇気は見た。

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