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第104話 ーー『α、Ω適応検査』① 蒼sideーー
『α、Ω適合検査』
それはオメガがヒートの時、アルファがラット時の血液中のフェロモンが、お互いのフェロモンにどう作用し反応しているか調べる、専門的な検査方法。
本来なら不妊治療に入る前、希望者が検査をし、確実に番だと分かった上で治療にあたる場合に使われるが、今回は伊吹と蒼の体の変化とフェロモン数値の変動の原因を見極め、蒼の番が伊吹、柚、または全く別人なのかで、その後の治療が変わるからだ。
今回の検査結果は蒼と伊吹には伝えられない。
なぜなら二人はまだ未成年で、不妊治療ではなく今回の検査は診察方法の目安の為だから。
それはもし番だとしても、お互いが生涯の伴侶とはいかない場合があるからだ。
大半は出会えるのが奇跡で、幸せな日々を過ごしている。
だが番と言えど、人は人。
人格までは変えられない。
アルファとはいえ凶暴な者は凶暴、犯罪者であったり、サイコパスであったり…
番に出会ったからといって、もともと持っているそれらは残る。
いつもは優しくても人格が急変したり、最悪危害を加えたりすることまでは、変わらない。
そこでもし凶暴なアルファが番を見つけたと、そのオメガに執着しないとは限らない。
だから成人し伴侶となり、お互い希望者の元でしか、または医師が治療の為必要だと判断した時しか検査はしないし、結果を伝えるのは前者だけだ。
それ以外は結果は伝えない。
それが決まりだ。
「蒼くん最終確認だが、今回の検査での結果は蒼くんにも伊吹くんにも教えられない。いいね」
勇気の問いかけに、
「はい。わかりました」
力強く蒼は頷いた。
俺には伊吹しかいない。
それは絶対に変わらない。
「じゃあ、この注射で人意的にラットを起こす。ピークになった時に採血をする。心身的に大変だと思うけど、頑張れるか?」
勇気が蒼に念押しをする。
「はい。よろしくお願いします」
蒼は自ら腕を勇気に差し出した。
「私達はすぐ隣りの部屋で蒼くんの様子を見ているけど。何かあればすぐにボタンをおしてくれ」
蒼に緊急用のボタンを手渡し、
「それじゃあ注射するよ」
ラット誘発剤を勇気が蒼の腕に刺した。
!!!!
その瞬間、蒼の心臓は跳ね上がり、
体の中に急激に熱いものが駆け巡り、欲望が脳内を占めていく。
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