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第122話 ー帰り道 ① 伊吹sideー

蒼と伊吹が病院の会計を済ませると、 「2人とも、お疲れ様」 「和臣兄さん!」 一度、病院に帰ったはずの和臣は、待合室まで2人を迎えにきていた。 「車で家まで送るよ」 というと、駐車場に停めてある車へと3人で向かった。 蒼と伊吹が後部座席に座ると、車が走り出す。 伊吹は車窓から変わっていく外の景色を見ながら、この景色のように今日、目まぐるしく変わっていった事を思い出していた。 蒼に対してしてしまっていた誤解と、蒼のフェロモンの事。 柚くんの事。 俺の体の事…。 何からどう整理していけばいいか… 菊池先生や中星先生から告げられた『後天性オメガ』… 今までは病院にいて、親身になってくれる先生が2人もいて、何かあればすぐに対応してくれる。 でも、いざ病院を出ると、今の俺の状態をすぐにわかってくれる人達の助言がなくなってしまった…… いつ変化があるのか? もうすでにあるの? フェロモン… 蒼に迷惑かからない? 自分で出ている感覚がないから、ヒートになる寸前までわからない…… これから一体… 伊吹の心はわからない事ばかりで、不安が募り、涙が出そうになる。 でも泣いたらダメだ‼︎ 泣いたって何も変わらないじゃないか。 蒼を心配させるばかりじゃないか。 泣かない。

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