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第128話 南部 柚 ⑤

そして、すくっと立ち上がると清美の目をしっかり見つめて、 「先生、今日からよろしくお願いします。…主人から連絡があったり、連れ戻しにきたら、私に連絡ください。すぐに迎えに行きます」 力強く言う。 「わかりました。お任せください。柚くんは私達が必ず守っていきます。だから安心してくださいね」 清美は優しく包み込むような笑みを浮かた。 「よろしくお願いします」 母親は深々と清美に頭を下げると、 「柚、必ず迎えに来るからね」 と、柚の頭を撫でた。 「うん‼︎ぼく、いい子で待ってる!」 「柚……」 「じゃあ柚くん。お母さんにバイバイできる?」 清美が柚を抱き上げると、 「お母さん、バイバイ。絶対にお迎え来てよ」 笑顔で柚は母親に手を振った。 「必ず迎えに来るから…大好きよ、柚…」 泣きそうな…でも笑顔で母親は、柚の事を振り返り、振り返り春日山児童養護施設を後にし、  柚は母親の姿が見えなくなるまで、手を振り続けた。 その姿が、 柚にとって最後に見た母の元気な姿となるとも、知らずに…………

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